2024年度のキャリアアップ助成金
なびー
キャリアアップ助成金を使って派遣先が派遣社員を正社員化する場合、
108万5千円も助成されるって本当ですか?
中宮先生
はい。様々な支給要件を満たすことが前提となりますが、
中小企業なら最大で148万5千円になることもあります。

こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
キャリアアップ助成金のうち、正社員化コースは、多くの企業で利用されているものです。派遣社員を派遣先が正社員として直接雇用する場合も申請可能です。

今回は、2024年度のキャリアアップ助成金「正社員化コース」について解説します。

※この記事は 2024年4月2日時点の情報を元に解説しています。

キャリアアップ助成金正社員化コースとは

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者や派遣社員などを正社員に転換した場合に助成される制度です。

昨年度まで、助成額は正社員転換1名につき57万円(中小企業の場合)でした。
2024年度は、80万円(中小企業の場合)に引き上げられます。また、派遣先が派遣社員を正社員として直接雇用する場合、28.5万円の加算が受けられます。

有期雇用労働者だけではなく、無期雇用労働者を正社員に転換した場合も助成金の対象となります。

キャリアアップ助成金の「正社員」とは?

キャリアアップ助成金の正社員は、次のすべての条件を満たす者です。

・賞与、退職金どちらかの制度が適用されている。
・昇給制度の適用を受けている。
・基本給、賞与、退職金、各種手当等について、
 いずれか一つ以上で非正社員と賃金の額または計算方法が異なる制度を明示的に定めている。
・派遣労働者ではないこと

主な支給要件

2024年度 変更点のまとめ

なびー
派遣元が、派遣労働者を正社員転換した場合は、対象になりませんか?
中宮先生
キャリアアップ助成金の正社員の要件に「派遣労働者ではないこと」と定められているので、「正社員で派遣就業する」は、助成の対象外です。
内勤社員に転換する場合は、対象になります。
ただし、個人単位抵触日を迎え雇用安定措置として、内勤社員として正社員転換した場合は対象外となります。

(1)助成額の引き上げ

従来、正社員転換後6か月経過時点で、57万円が支給されていましたが、
対象期間が12ヶ月に延長されました。

前半6か月経過時に40万円、後半6か月経過時に40万円、
合計80万円に拡充されました。(金額は中小企業の場合)

従来と異なり、転換後半年ごとに2回支給申請をしなければなりません。

(2)対象となる有期雇用労働者要件の緩和

対象となる有期雇用労働者の雇用期間を現行の「6か月以上3年以内」から「6か月以上」に緩和されます。
また、対象となる雇用期間の上限がなくなりました。

ただし、雇用された期間が5年を超える有期雇用労働者(派遣労働者を含む)は、正社員転換前の雇用形態を無期雇用として、助成額を算定します。実務的には、3年以内が5年以内に延長されたと見たほうがよいかもしれません。

(3)正社員転換制度の規定に関する加算措置

正社員転換制度を新たに規定し、正社員に転換した場合、20万円(大企業15万円)が加算されます。
この加算は、1事業所1回限り利用することができます。

(4)多様な正社員制度規定に関する加算措置

「勤務地限定・職務限定・短時間正社員」制度を新たに規定されました。
その区分で正社員に転換した場合、40万円(大企業30万円)が加算されます。
この加算は、1事業所1回限り利用することができます。

中小企業の派遣先が、派遣労働者を多様な正社員として直接雇用した場合、
80万円+28.5万円+40万円=148万5千円が支給されることになります。


ユアサイド中宮

解説者

社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員

社会保険労務士 中宮 伸二郎

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。

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