【解説】マーケティングの基礎知識

こんにちは。ユニテックシステムのマーケティングチームです。すべての業種で役立つマーケティングの考え方・基礎知識をまとめてみました。新規事業を立ち上げる際、既存事業の見直しを行う際の参考にしてみてください。

おおまかな流れ

マーケティングには、おおまかに以下のような流れがあります。

まずは、環境分析です。自社を取り巻く環境(世の中)がどのような状態にあるか、また自社が参入する(している)市場はどのような状態にあるか、それを踏まえた自社の強み・弱みなどを明確化します。

次に行うのがSTP分析です。市場を分析し、実際にどの市場でどういったポジションを取って勝負するのか決めます。

最後は具体策を立てます。マーケティングミックスとも呼ばれる4P分析です。4P分析とは、Product(製品),Price(価格),Place(流通),Promotion(プロモーション)の頭文字をとった分析方法です。

これら4つの角度から総合的にマーケティング戦略を立案します。

マクロ環境とミクロ環境

マクロ環境は、企業を取り巻く広い外部環境のことを指します。外部環境は、消費税率の変更といった法改正や、規制、景気動向、パンデミックや戦争といった世界情勢など、企業がコントロールできない、いわゆる「世の中」というものです。


一方、ミクロ環境はグッと範囲が狭くなり、その企業を取り巻く業界のことを指します。消費者や競合他社といった、いわゆる「市場」というものです。

PEST分析

△ 例)自動車メーカーの場合のPEST分析

PEST分析とは、マクロ環境(世の中)分析をおこなうマーケティング手法です。PESTとは、「Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)」の4つの頭文字を取ったものです。

ビジネスは世の中(マクロ環境)全体の変化に大きく影響を受けます。まず、一番大きな枠組みとしての世の中(マクロ環境)を把握することから始めましょう。

Politics(政治)
Politics(政治的要因)は、自社に影響を与える現行の条例や法律など、規制、政治などの動向を指します。法改正に伴って新しい市場が生まれることもあれば、衰退していく市場もあります。ルールを守らなければ事業を展開することはできません。まずは、政治的要因をしっかり把握することが他社と同じ土俵に立つための第一歩と言えるでしょう。

Economy(経済)
Economy(経済的要因)は、物価上昇率やGDPや為替相場などの経済動向を指します。例えば円安が続くと、海外から仕入れて商品を販売している企業にとっては大きな脅威となります。商品の値上げを検討しなければいけない恐れもあり、消費者の動きを鈍らせてしまう可能性もあります。長期的な経済動向を予測して、リスクを最小限に抑えられるよう対策することも大切です。

Society(社会)
Society(社会的要因)は、人口の推移や生活環境の変化、人々の価値観の変化を指します。

核家族の増加や価値観の多様化など、ライフスタイルが変われば人々の意識が変化し、購買意識にも変化が起きます。こういった変化に常に敏感になることで、すばやく顧客ターゲットを変更したり、需要の高いビジネスへ迅速に新規参入したりできます。

Technology(技術)
Technology(技術的要因)は、製品の生産技術・デジタル技術・IT技術などの技術進展を指します。

技術革新は、工場の製造工程や販売提供手法などさまざまな分野に影響を与えるため、事業の成長や衰退に大きく関わります。技術の進歩に追いつけないビジネスは、簡単に淘汰されてしまいます。

3C分析

△ 3C分析

3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)、という3つの「C」について分析するマーケティング手法です。3つの角度から自社の商品・サービスを分析することで、競合との差別化や、顧客への価値提供を客観的に考えることができ、商品・サービスの企画、販促、ブランディングに役立ちます。

Customer…市場規模や顧客のニーズなどを分析する
自社が提供しようとしている商品・サービスに、そもそも一定規模の市場があるのか確認します。市場規模が小さすぎる場合は、そのなかでどんなにシェアを高めても目標の売上金額には到達しない可能性があります。
また、その市場の今後の成長性についても予測しましょう。
顧客の属性(ペルソナ)についても考えます。「35歳女性・東京都在住・会社員・独身・習い事に通っている」のように実在する人物のように詳細に想定することで、より分析の精度は高まります。

Competitor…競合の売上や成功の理由を分析する
競合は、目に見えている競合だけではありません。業界が違っても、代替となる商品・サービスは存在します。例えば、コロナ禍では出張は控えられ、Zoomなどを利用したWebミーティングが普及しました。コロナ前では出張に利用されていた新幹線や飛行機の競合が、ZoomなどのWebミーティングツールとなるのです。こういった顧客目線の広い視点で競合を捉える必要があります。

Company…自社の強みや弱み、提供価値などを分析する
いわゆる経営資源(人、モノ、金)を客観的に把握します。自社の商品・サービスの市場シェアや品質、開発能力、ブランド・販促力、営業力などを総合的に分析していきます。

△ 例)自動車メーカーの場合の3C分析

Customer…市場や顧客
自動車メーカーAを例に3C分析をしていきます。まず、自動車の市場規模は近年右肩下がり。1990年代から現在に至るまで国内における新車・中古車の販売台数は減少傾向にあります。今後もこの傾向は続くと予想され、要因としては、人口減少と若者のライフスタイル・価値観の変化によるクルマ離れが挙げられます。

Competitor…競合
競合としては、軽自動車を中心にコンパクトカーなど経済性に優れた車種をそろえているのがD社で、トラックやバスといった商用車を製造販売するH社があります。

Company…自社
自社は日本最大手の自動車メーカーです。軽自動車から高級車まで豊富なラインナップを展開しています。ハイブリッド技術の先駆者であり、近年はPHVやFCV、水素エンジンなどといった自動車技術で世界をリードしています。

<SWOT分析>

△ 例)自動車メーカーの場合のSWOT分析

自社の製品・サービスを分析しようとすると、「強み(メリット)と弱み(デメリット)を探ること」を思いつくのではないでしょうか。SWOT分析なら「機会」や「脅威」といった外部環境(世の中・市場)にも目を向けることで、客観的に全体像を捉えられます。SWOT分析では、内部環境と外部環境を組み合わせて分析するため、なるべく偏った視点を避けることができます。

SWOT分析とは、自社の外部環境と内部環境を以下の4つで分析することです。

Strength(強み)
技術力の高さや長年の販売経験など、自社の特長や得意とするところです。

Weakness(弱み)
コストやリソースなど競合よりも劣る点、販促プロモーションのやり方など自社が苦手・短所とするところです。

Opportunity(機会)
社会や市場の変化・法改正など、自社にとってビジネスチャンスとなるような環境の変化のことを指します。

Threat(脅威)
社会や市場の変化・法改正など、自社の強みを打ち消してしまうような環境変化や、競合他社の動きなど、マイナス要素を指します。

☆ 強み × 機会:機会をうまく自社の強みで活かすには?
☆ 弱み × 機会:弱みを補強して機会を活かすためにできることは?
☆ 強み × 脅威:自社の強みをもって、脅威に対して立ち向かえることは?
☆ 弱み × 脅威:自社の弱みを理解し、脅威による影響を最小限にするためにできることは?

STP分析

ビジネスシーンにおいては、自社や自社の商品・サービスを取り巻く環境を正しく把握し、より優位なポジションや魅せ方が出来るよう、市場やターゲット層を意図的に選んでいくことが大切です。そういったなかで、STP分析が役立ちします。STP分析とは、セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(狙う市場の決定)、ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)の3つの英単語の頭文字をとって名付けられた分析方法です。STP分析をすることで、自社がターゲットにするべき市場や他社との関係性を明らかにし、効率的な事業展開ができます。

既に商品・サービスがある場合は、自社商品がより魅力的に映るセグメントやポジションを探します。
まだ商品・サービスがない場合は、勝算のあるセグメントやポジションを探します。

セグメンテーション

市場を細分化(セグメンテーション)します。買い手の市場やタイプを、売り手にとって意味のある要素で切り分けます。まず市場全体をニーズによって細かく分類し、セグメンテーションの変数、顧客ニーズや製品価値などから、セグメンテーションの軸を探します。

セグメンテーションの変数として用いられるのは、下記の4つです。

ターゲティング

以下は「価格」「世帯」でセグメンテーションされた自動車市場です。右下には安価なファミリー向けの自動車。左上には、単身向けの高級車が並びます。自社が持っているブランドや技術力、生産能力などを加味してどの市場で戦うのかを決めます。

ポジショニング

高級車市場で戦うと決めたら、高級車市場でのポジショニングを行います。ポジショニングは、ターゲットの購買決定要因を軸に行います。以下は、「実用的/趣味的」と「伝統的/先進的」を軸にしています。ここから競合他社をマップ上に配置し、自社が狙うべきポジションを考えます。
さまざまなポジショニング軸を組み合わせて、いろいろな角度でポジショニングを考えていくことがコツです。

△ 例)高級車のポジショニングマップ

4P分析

4P分析とは、Product(製品),Price(価格),Place(流通),Promotion(プロモーション)の頭文字をとった分析方法です。

これら4つの角度から総合的に「マーケティング戦略を立案する」時に使います。

例えば、ヴィトンのバックがコンビニで売られていることはありませんし、1,000円で売られていることもありません。ヴィトンが作ったチラシが自宅のポストに入っていることもないでしょう。高品質の製品は、それに相応しい価格、売り場、販促方法を取っているのです。

これらは、私たちの日常に溶け込んでいてイチ消費者から見ると簡単に想像できることです。しかし、自社製品としてこれからマーケティングしていこうとするときは、意外に分からなくなってしまいます。

スムーズな4P分析には、これら4項目が互いに作用していることを覚えておくと良いでしょう。
魅力的な製品を用意して適正な価格を設定し、ニーズに合った場所で適切に宣伝できるようになるため、売上がアップすることを見込めます。

Product(製品)
自社の商品・サービスにはどのような強みがあるのか、どのような品質、デザイン、パッケージにするのか、さらに購入後の保証といったアフターフォローについても明確化します。その上で、顧客のニーズを満たした商品・サービスであるか、競合と比べてどこが優れどこが劣っているのか考えます。これらを踏まえたうえで、コンセプトを考えるとよいでしょう。

Price(価格)
商品・サービスの価格は売れ行きを決定づける重要なポイントです。ユーザーが得られる価値と、ユーザーが支払う対価のバランスが適正かどうかを考えます。具体的には以下3つの視点から判断します。

利益
どの程度利益を確保するか。「価格=コスト+利益」で、具体的な数字を算出してみましょう。

需要
設定した価格と品質で、ユーザーのニーズを満たせるか。高額な価格設定をした場合、それ相応の価格に見合う価値(高品質)が求められます。価格と品質(価値)のバランスが取れているか考えましょう。

競合
ライバルの価格と比較してどうか。競合に対し価格で勝負するのか、商品の品質で勝負するのかなど、方向性を決めます。

Place(流通)
その商品をどこで売るか。安価な化粧品であればスーパーやドラックストアなどが適していますし、高級な化粧品なら百貨店が向いているでしょう。商品特性やターゲットに合わせた「流通」を分析することが重要です。ユーザーのニーズにマッチした商品でも、販売場所や提供方法が不適切だと、販売の機会を失ってしまいます。

Promotion(販促)
広告(CMやリスティング広告)、チラシやクーポン配布、SNS運用、人的販売、ポイントカードなどです。効果的なプロモーションのためには商品特性やターゲットに合わせた媒体選びが重要です。例えば、20代向け化粧品の広告を50代向け雑誌に掲載しても効果が薄いと思われます。最適な媒体を選び、自社の強み・製品/サービスの訴求・他社と比較した場合のメリットといった3つの視点から販促を行うと効果的です。

STP分析で決めた「ターゲット」や「セグメント(領域)」に、マーケティングミックスの施策が合っているかが重要です。‍

まとめ

事業はあらゆる要素が影響し合って成り立っています。その要素をひとつひとつ紐解き、順序良く分析・実行することで、より理論的・計画的に行えるのが、今回ご紹介したマーケティングのフレームワークです。一つひとつは簡単ですので、ぜひ参考にしてみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。