こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
2022年10月の健康保険・厚生年金の法改正により、社会保険に加入させることができない「2ヶ月以内の期間を定めて使用される者」の取扱いが厳格化されました。
この度の法改正は、短期派遣者全般に適用されるものなので、多くの派遣社員が対象となっています。
今回は、「2ヶ月以内の期間を定めて使用される者」に関する解説です。
※この記事は 2023年2月23日時点の情報を元に解説しています。
目次
「2ヶ月以内の期間を定めて使用される者」とは
改正以前は、単に「2ヶ月以内の期間を定めて使用される者」は、社会保険に加入できないとだけ定められていました。有期雇用契約でも、最初の2ヶ月は適用除外としていることが多かったです。
有期雇用契約でも継続的に雇用されることもあることから、初回の雇用契約を更新する見込みがない場合に限り加入できないと改正されました。更新する見込みの有無は、主に雇用契約書の記載で判断されます。
更新見込みがないと判断される場合
・雇用契約書等に更新しない旨が記載されている
・大勢の派遣社員と契約するため、基本フォーマットは「更新する場合がある」となっているが、
本人との間で、別途更新しない旨を約束している場合が想定されます
更新見込みがあると判断される場合
・雇用契約書等に更新する旨、更新する場合がある旨が記載されている
・同一派遣元で同様の雇用契約の派遣社員が、契約更新をされた実績がある
(個別に更新しない合意がある場合は、適用除外)
派遣契約が延長されることになった場合
何らかのトラブルなどで、「2ヶ月以内の派遣契約で、契約更新予定がない派遣スタッフ」の契約期間を延長したい事態になったという想定で例を用意しました。
例1(契約当初:2ヶ月の契約 + 追加:2ヶ月の契約)
さらに2ヶ月契約を延長する場合。
社会保険の加入日を、派遣元と派遣社員が雇用契約の更新に合意した日とします。合意した日とは、口頭のやり取りは含まれず、文書(メール含む)により合意した日となります。
実務上、2回目の雇用契約を締結した日が社会保険の加入日となります。
例2(契約当初:2ヶ月の契約 + 追加:1週間の契約)
例2のように派遣契約更新の見込みがなかったが、契約を延長する場合。
例えば、1週間の延長で雇用契約を締結し、派遣就業させると日雇派遣の原則禁止に抵触してしまいます。
そのため、このような事態が生じた際には、雇用契約を巻き直して、当初から2ヶ月+1週間の雇用期間とすることがあります。これは、当初から2ヶ月を超える雇用契約を締結していることになるため、就業開始日に遡って社会保険に加入させなければなりません。
日雇い派遣の原則禁止ついては以下の記事を参考にしてください。
2ヶ月以内に退職した場合
就業当初に「派遣契約更新の見込みがある」と判断して雇用契約を結んだ派遣社員が、2ヶ月以内に退職してしまった場合。このような場合であっても社会保険加入の取り消しはできません。
「派遣契約更新の見込みがある」雇用契約を締結したら、就業初日から加入させることになります。
社会保険加入の取り消しができる唯一のケースは、契約開始の就業初日から出社せずに退職してしまう場合のみです。
派遣契約更新の見込みを雇用契約書に記載しないリスク
社会保険の加入判断は、主に雇用契約書の「契約更新に関する記載」により判断されます。
「更新見込みがない」「更新見込みがある」の記載をおろそかにすることは、雇止めトラブルの原因になるだけではなく、遡って社会保険を加入させる指導を年金事務所から受けることとなります。
漫然と規定値の「更新見込みがある」とせず、事案ごとに適切な記載を心がけてください。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。