日雇派遣禁止と例外

こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
日雇派遣は、他の派遣と比べて雇用管理がおろそかになりやすく、労働者保護に欠ける側面があります。そのため、日雇い派遣は一部の例外を除いて禁止されています。その例外とは、「業務の種類」と「派遣社員の属性」の2種類で、それぞれに条件が定められています。

日雇派遣の原則禁止とは

日雇派遣の原則禁止とは、
「日雇」の者を派遣の対象としてはならないということです。

引用:日雇派遣の原則禁止について

派遣元事業主は、以下の場合を除き、日雇労働者(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者)について労働者派遣を行ってはならない。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000644420.pdf
厚生労働省(参照 2022-11-04)

日雇派遣の原則禁止とは、「日雇」の者を派遣の対象としてはならないということです。
「日雇」とは、30日以内の雇用契約で働く者を指します。
日々雇用契約を結ぶ者だけではなく、30日以内の雇用契約を締結している場合、「日雇」となります。

労働者派遣法の「日雇」は、30日以内の雇用契約を更新して、31日以上継続して勤務することとなった場合でも、「日雇」のままであることに注意が必要です。
雇用契約の期間で判断するため、派遣先との派遣契約期間は制限されていません。

また、30日以内の派遣契約に対して、日雇以外の派遣社員を派遣する場合は、
日雇派遣とはなりません。

日雇派遣が可能な業務

政令第4条で定める、「研究開発」や「受付、案内」などが該当する19種の業務があります。
こちらの業務であれば、誰でも日雇派遣で働くことができます。

令第4条の業務

これらの業務は、かつて政令26業務と呼ばれた専門的知識、技術、経験を必要とする業務をもとに19種類の業務が指定されています。

日雇派遣の注意点

日雇派遣の個別契約書を交わす際、業務の番号を記載する必要があります。
業務の番号は厚生労働省が交付している「労働者派遣事業関係業務取扱要領」を参照してください。

引用:労働者派遣事業関係業務取扱要領

⑩ 従事する業務の種類
・従事する業務については可能な限り詳細に記載すること。
・令第4条第1項各号に掲げる業務について労働者派遣をするときは、当該号番号を付すこと。ただし、日雇労働者に係る労働者派遣が行われないことが明らかである場合は、この限りではない。

https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000986446.pdf#page=254
厚生労働省職業安定局(参照 2022-11-11)

実施にあたっての注意点は、個別契約書、派遣元・先管理台帳に業務の番号を記載すること、また、契約した業務の範囲を超えて働かせてしまうと違反となることです。

日雇派遣が可能な者

以下のいずれかに該当する者は、全ての業務(禁止業務は除く)で日雇派遣として働くことができます。

対象者が日雇派遣が可能であるかの確認は、派遣会社が雇用契約のたびに行わなければなりません。

①年齢の確認

マイナンバーで確認します。

②学生であるか否か

学生証で確認します。

③・④ 収入の確認

源泉徴収票、課税証明書等で収入を確認します。しかし、この書類は準備に時間がかかってしまうことも考えられます。もし、就業開始までに書類準備が間に合わない場合は、下記に該当する旨の誓約書を、日雇派遣社員に提出してもらい派遣することも認められています。

③主たる収入が年500万円以上
④世帯収入が年500万円以上の世帯に属する(世帯収入の半分以上稼ぐ者を除く)

誓約書の注意点

日雇派遣禁止の例外に該当していることを誓約書で確認することが認められているのは、合理的理由により確認書類が準備できないときに限られています。
例えば、採用の翌日に就業するため、確認書類の準備が間に合わないなどの場合です。
確認の手間を省くために書類提出を求めず、誓約書の提出を求めることは不適切とされています。

また、誓約書は、派遣元管理台帳とともに保存しなければなりません。加えて、誓約書を使用した理由についても記録しなければなりません。

まとめ

日雇派遣の原則禁止から10年が経ちました。ギグワーク(単発の仕事)の普及で日雇派遣を取り巻く環境も大きく変わっていますが、日雇派遣に関する法令に変更はありません。適切な手順で日雇派遣を実施していきましょう。


ユアサイド中宮

解説者

社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員

社会保険労務士 中宮 伸二郎

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。

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