職業紹介の求人不受理と自己申告

こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
最近の都道府県労働局の定期指導において、求人不受理の確認状況に関する指導が強化されています。求人の不受理とは、⼀定の労働関係法令違反のある求⼈者からの求⼈の申し込みなどを受理しないことを指します。

職業紹介事業者は、原則として全ての求人申込を受理しなければならないとされています。しかし、不適切な求人や企業を排除するために例外的に求人申し込みを受け付けないことが認められています。職業紹介事業者は、この例外に当てはまるかどうか、求人企業に確認しなければなりません。
今回は、求人不受理の取扱いについて解説します。

※この記事は 2022年9月28日時点の情報を元に解説しています。

求人不受理の対象は6種類

職業紹介事業者が求人を受け付けないことができるのは、次の6種類です。
いずれかに当てはまる場合、その企業の求人を受け付けないことができます。

①求人内容が法令に違反する求人
②労働条件が通常の労働条件と比べて著しく不適当な求人
③求人企業が労働条件を明示しない求人
④一定の労働関係法令違反のある求人企業による求人
⑤暴力団員等による求人
⑥職業紹介事業者からの自己申告の求めに応じなかった求人企業による求人

上記に当てはまる求人は、職業紹介事業者の判断で、「受け付けること」も「受け付けないこと」も可能です。
ただし、厚生労働省は上記に当てはまる求人は、受理しないことが望ましいと指導しています。

求人企業の自己申告とは

6種類の求人不受理の理由のうち、
④一定の労働関係法令違反のある求人企業による求人
⑤暴力団員等による求人
に当てはまるかどうかは、申し込みの段階で判断がつきません。

そのため、職業紹介事業者は、当てはまるかどうかの自己申告を求人企業に求めることができるとされています。正当な理由がない限り、申告を求められた求人企業は、回答をしなければなりません。

自己申告方法は、法令で規定されていません。文書・電子メール等を利用し、④・⑤に当てはまるか否か自己申告していただく方法が妥当と思われます。厚生労働省が求人企業の自己申告書の例を公表しているので参考にしてください。

引用:改正職業安定法(求⼈不受理)について

(1)求人の受理に当たっては、求人の申し込みが求人不受理の要件に該当するかどうかについて、求人者に対して自己申告を求め、確認してください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000602108.pdf
厚生労働省(参照 2022-09-28)

派遣社員の直接雇用、日々紹介も対象

労働者派遣事業と職業紹介事業を兼業している場合についてです。
派遣先が派遣社員の直接雇用を申し出た際、職業紹介として取り扱うことが多いと思います。

その際、職業紹介として取り扱う場合、必要に応じて派遣先に自己申告を求めなければなりません。

また、日々紹介も職業紹介のため、自己申告が必要です。ただし、一般的に考えて、昨日と今日で自己申告の内容が変わることは稀であることから、日々の求人申込に対して、毎日自己申告を求める必要はないと考えられます。取引開始時に自己申告をしていただき、その後、一定期間ごとに自己申告を求める等、自己申告を提出していただくタイミングを社内で定めてください。


ユアサイド中宮

解説者

社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員

社会保険労務士 中宮 伸二郎

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。

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