こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
かつて、派遣社員の勤怠は紙のタイムシートに派遣社員が記入し、派遣先の承認をもらって派遣元へ送付することが一般的でした。
現在では、スマホで打刻やQRコードの読み取りなど様々なサービスが提供されています。
しかし、派遣社員の勤怠記録は、一般の労働者と異なる点があるため、専用のサービスを利用していないと労働局の指導対象になってしまうことがあります。
今回は、派遣社員の勤怠記録について解説します。
※この記事は 2022年12月4日時点の情報を元に解説しています。
目次
誰が派遣社員の勤怠を記録すべきか
派遣社員の労働時間管理は、派遣先の責任とされています。
具体的には、
- 法定労働時間を守る義務
- 時間外・休日労働を36協定の範囲内とする義務
- 休憩を与える義務
があります。
また、派遣先管理台帳の記載事項に「派遣就業をした日」「派遣就業をした日ごとの始業・終業時刻、休憩時間」が規定されています。
これらは、所定労働時間ではなく、実際に就業した日の始業・終業時刻の実績を指しています。
以上のことから、派遣社員の勤怠記録は、派遣先の義務となります。
派遣先管理台帳を作成する目的
派遣会社は、派遣先から送られてくる、派遣社員の勤怠データをもとに給与計算などを行っていると思います。
派遣社員の勤怠データは、給与計算のためだけに通知されているものではありません。派遣法の定めにより通知しなければならないものとされています。
これは、料金・給与計算に必要な情報だけではなく、派遣社員が労働者派遣契約通りに就業していることを確認するためです。
派遣先から派遣元へ、派遣先管理台帳に必要な通知事項
- 派遣労働者氏名
- 派遣就業をした日
- 派遣就業をした日ごとの始業・終業時刻、休憩時間
- 従事した業務の種類
- 従事した業務の伴う責任の程度
- 労働に従事した事業所の名称、所在地その他派遣就業の場所、組織単位
派遣特有の記載事項
一般的な勤怠システムの場合、
従事した業務の種類、責任の程度、就業場所の名称・所在地、組織単位
を記録することはできません。
しかし、派遣先が一般的な勤怠システムを使用し、派遣元に通知をした場合、特有の記載事項が不足します。使用するサービスによっては、休憩時間すら表示されていないことがあります。
通知事項が不足していると派遣会社は、都道府県労働局から是正指導を受けることになってしまいます。備考欄に追記したり、別紙を作成したりする工夫で対応していることもあります。
しかし、上記のやり方では、作業の手間が増えてしまい、ミスが起きる原因になります。 その結果、うまくいかないという事例が見受けられます。
勤怠管理システムによる派遣先管理台帳の出力
人材派遣に特化した勤怠管理システムの1つに「e-naviタイムシート」があります。
派遣管理を想定した作りの勤怠管理システムなので、タイムシートが派遣特有の表記になっていますね。
派遣先管理台帳として必要な項目を網羅していますので、
作業の軽減が期待できます。
勤怠管理システムと派遣管理システムの連携
e-naviタイムシートは、人材派遣管理システム「スタッフナビゲーター」と連携することができます。
勤務入力から取り込みまでの処理が全てデジタル化されていますので、
転記ミスがなくなります。
またタイムシートの回収、チェック処理の省力化が図れます。
まとめ
派遣社員の勤怠記録は、派遣先に責任がありますが、通知の不備に対する指導は派遣会社が受けることになってしまいます。
派遣社員に特化したサービスであれば、派遣先に負担をかけずに派遣法に適合した管理を行うことが可能となります。派遣会社のDX推進の際には、派遣特有の視点が必要になることをお忘れなく。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。