こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
抵触日違反となる派遣は、派遣先に労働契約申込みみなし制度が適用されることもあり、派遣会社にとって抵触日の管理は、非常に大切なことです。
今回は、個人単位の抵触日を迎える際、気を付けるべき雇用安定措置義務について解説します。
※この記事は 2023年10月27日時点の情報を元に解説しています。
目次
雇用安定措置義務とは
60歳未満の有期雇用派遣社員が、同一組織単位で働くことができるのは3年までと定められています。
この3年間の期間制限を個人単位の抵触日といいます。
個人単位の抵触日を迎えたら、同一組織単位で勤務を続けることはできませんが、派遣会社は個人単位の抵触日の到来だけを理由に雇止めすることは禁止されています。個人単位の抵触日以後も派遣社員が働くことを希望するのであれば、派遣会社は継続して働ける環境を提供しなければなりません。
これを雇用安定措置義務といいます。
4つの選択肢
雇用安定措置は、以下の4種類のいずれかの措置を講じなければなりません。
派遣社員の希望の聴取
雇用安定措置を実施する際に、派遣社員が抵触日以降どのような働き方を希望しているか聴取しなければなりません。①~④の選択肢に優先順位をつけて希望を訊くことも認められています。
派遣会社は、派遣社員の希望に沿って雇用安定措置を実施しなければなりませんが、必ず派遣社員の希望を叶えなければならないということではありません。派遣社員が派遣先での直接雇用を希望したとしても、派遣先に直接雇用の意思がなければ、希望が叶うことはありません。
このような場合、派遣会社は新たな派遣先を提供することで雇用安定措置を実施したことになります。
また、派遣社員の希望は、派遣元管理台帳に記録しなければなりません。
直接雇用と紹介手数料の関係
雇用安定措置に基づき、派遣先に直接雇用を依頼する際、派遣先・元間によくあるトラブルとして「職業紹介手数料の支払い」があります。
これに関する厚生労働省の見解は、「派遣先は紹介手数料を支払う義務がない」です。
引用: (派遣で働く皆様へ)平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A
「派遣先への直接雇用の依頼」は、職業安定法上の職業紹介ではないので、派遣先は同法上の職業紹介の手数料を支払う義務はありません。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111089_00001.html
また、派遣先は、正当な理由なく、派遣先と派遣労働者の間の雇用契約を実質的に制限するような金銭については、支払う義務はありません。
厚生労働省 (派遣で働く皆様へ)平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A Q4(参照 2023-10-31)
派遣先合意のもと、選択肢④「紹介予定派遣、職業紹介により就職させる」として、
有料職業紹介の許可を持つ派遣元が、紹介手数料を請求することは可能ですが、
選択肢①「派遣先への直接雇用の依頼」が成立した場合、
紹介手数料の請求はできないことに注意が必要です。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。