こんにちは、社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
2025年4月1日以降に育児休業を1歳半または2歳まで延長して、育児休業給付を受給する際の手続きが厳格化されます。
この変更は育児休業給付金を目的として、保育所(幼稚園・保育園など)に入所させる意思がないにもかかわらず入所申し込みをしていると思われる事案に対応したものです。
今回は、育児休業給付の延長手続きの厳格化について解説します。
※この記事は 2024年8月5日時点の情報を元に解説しています。
目次
育児休業給付の対象期間
育児休業給付は、子が1歳に達する日(※)まで育児休業を取得しやすくし、労働者の雇用継続を援助・促進するために支給されるものです。
※「1歳に達する日」とは、1歳の誕生日の前日です。
ただし、保育所に入所できない等のやむを得ない事情がある場合に限り、子が1歳になった後も育児休業を延長することができます。延長できる期間は、最長2歳までですが、1歳6か月までと2歳までに区切られています。
1歳になる時点で延長が認められれば、自動的に2歳まで給付されるものではなく、1歳6か月時点で再度延長申請が必要となります。
延長申請時の提出書類
これまでは、入所保留通知書、入所不承諾通知書など市町村の発行する入所できない旨の通知書だけを提出しましたが、2025年月1日以降の延長については、以下2つの書類の提出が追加されます。
①育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
引用:延長事由認定申告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001269655.pdf
厚生労働省(参照 2024-08-06)
②保育所の利用申込書のコピー
市町村の受理印は不要ですが、申込書の全ページを提出します。
申請のタイミングを逃して申請していない場合や
市区町村に入所可能か問い合わせただけでは延長申請は認められません。
ただし、子が病気や障害により特別な配慮が必要などの理由で市町村に申請が受け付けてもらえない場合は、延長が認められることがあります。
延長の要件
2025年4月1日以降、育児休業給付の延長が認められる要件は、以下のとおりです。
引き続き適用される要件
①保育所の入所申込年月日が1歳(1歳6か月)に達する日以前となっていること
②入所希望日が1歳(1歳6か月)に達する日の翌日以前となっていること
③市町村が発行する入所保留通知書、入所不承諾通知書などの通知があること
④理由なく内定辞退を行っていないこと
追加される要件
⑤申し込んだ保育所が、合理的な理由なく自宅から通所に片道30分以上要する施設のみとなっていないこと
※片道30分以上の保育所への申し込みでも、以下の場合は、「合理的な理由」があると判断されます。
・通勤経路上に保育所がある場合
・自宅から30分未満で通える保育所がない場合
・自宅から30分未満で通うことができる保育所の全てについて、勤務時間または勤務日(曜日)に対応できない場合
・子が疾病や障害により特別に配慮が必要であり、30分未満で通える保育所等は全て申し込み不可となっ ている場合
⑥申込みに当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていないこと
例1)1歳の誕生日(9/15)の2ヶ月前に入所保留通知書が発行されている場合
↳ この例の場合、入所保留通知書は、9/15時点で保育が実施されていないことが確認できる書類となります。
例2)1歳の誕生日(9/15)の2ヶ月前より前に入所保留通知書が発行されているが、
保留の有効期間に1歳の誕生日が含まれている場合
↳ この例の場合、市区町村から新たな入所保留通知書が発行されていなければ、6/25発行の入所保留通知書は9/15誕生日時点で保育が実施されていないことが確認できる書類となります。
例3)1歳の誕生日(9/15)の2ヶ月前より前に入所保留通知書が発行されており、
保留の有効期間に1歳の誕生日が含まれていない場合
↳ この例の場合、6/25発行の入所保留通知書は9/15誕生日時点で保育が実施されていないことが確認できる書類となりません。延長の要件を満たすには、8月または9月に入所を申込む必要があります。
厚労省 https://www.mhlw.go.jp/content/001269700.pdf より抜粋して作成
育児休業給付の延長を希望する場合は、自ら入所希望時期に応じた申請期限を確認し、入所申請をしなければなりません。
また、その際に申請書のコピーを保存することもお忘れなく。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。