新型コロナウイルスの影響による「雇用調整助成金」の特例措置が、6月に再拡充されました。主な変更点は、日額上限を15,000円に引き上げること、緊急対応の実施期間を9月30日までとすることです。また、休業手当が支給されない中小企業の労働者に国が直接給付する新型コロナウイルス感染症対応休業支援金制度が設けられました。今回は、再拡充された「雇用調整助成金」に関するQ&Aです。
※ 2020年8月4日時点の情報を元に解説しています。
目次
【1】賃金締切日が20日の場合、9月30日まで延長された緊急対応期間は、どのように適用されるのでしょうか。
9月30日までの期間を含む判定基礎期間(賃金締切期間)が、雇用調整助成金の緊急対応期間の対象となる休業です。9月21日から10月20日の間に休業を実施する場合、10月20日まで緊急対応期間として取り扱われます。ただし、緊急雇用安定助成金は、判定基礎期間にかかわらず9月30日までの休業が対象となるため注意が必要です。
【2】雇用区分によって休業手当の支払率を異なるものとしている場合、どのような取扱いとなりますか。
原則は、支払率の低い方を用いて申請しますが、緊急対応期間中の申請ついては、
①「適用される労働者の数が最も多い支払い率」や
②「各支払い率の単純平均または各支払い率が適用される労働者数により加重平均をした支払い率」も認められています。
(例)
内勤社員(20人)の休業手当率100%
派遣社員(300人)の休業手当率80%
①「適用される労働者の数が最も多い支払い率」の例
人数が最も多い支払率80%のため80%として申請
②「各支払い率の単純平均または各支払い率が適用される労働者数により加重平均をした支払い率」の例
単純平均の場合 100%+80%=90%
加重平均の場合 (100%×20人)÷320人+(80%×300人)÷320人=81.25%
【3】生産指標要件(売上等の5%以上低下)は申請の都度、満たさなければならない要件ですか。また、売上以外の指標を用いることはできますか。
初回申請の際に確認資料を提出し、2回目以降の申請の際は生産要件の確認は不要です。そのため、2回目の申請の際に低下率が5%未満であっても申請することができます。また、雇用量の変動と相関が高ければ、売上以外の指標でも確認することができます。厚生労働省が公表しているQ&Aでは、労働者派遣事業であれば、労働者派遣契約の件数や就業中の派遣労働者数(休業中の者を除く)も指標になり得るとしています。
【4】従業員が「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金制度」を活用すれば、企業は休業手当を支払わなくても良いのでしょうか。
労働者が「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」を受給したとしても、企業の休業手当支払い義務が免除されることはありません。この支援金は、雇用調整助成金の個別支払制度と位置付けられているため、労働者が支援金を受給した後に企業が休業手当を支払った場合、(雇用調整助成金の対象となりますが)、労働者は支援金を返還しなければなりません。また、支援金の申請数の多い企業には、雇用調整助成金の活用を促して行くこととされています。
以上のことから、資金ショートなどやむを得ない事情がないかぎり企業が休業手当を支払い、雇用調整助成金を活用すべきと思われます。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。