2023年度一般賃金に関する通達

こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
厚生労働省より、2023年度の職種別平均賃金が公表されました。

これは、労使協定で派遣スタッフの賃金を決定する際使用するもので、
労使協定で派遣社員の賃金を決定する場合、一般賃金(従事する職種ごとに定める水準)以上の賃金としなければなりません。

この記事を読むことで、2023年4月1日から適用される一般賃金についてわかります。

※この記事は 2022年8月30日時点の情報を元に解説しています。

【2023年度】職種別時給の傾向

職業安定業務統計の基準値0年の額の推移

職業安定業務統計の中から「257総合事務員」「781選別作業員」を抜粋しました。

おおむね全ての職種で、職種別の時給が上昇しています。
上昇の理由は、求人難によって募集時の賃金に影響が及んだと予想しています。職種別の時給を毎年引き上げることを目的としているものではありませんが、結果として多くの職種で引き上げられています。

能力・経験調整指数

能力・経験調整指数」とは能力、経験の上昇に伴う賃金上昇の指標となるもので、勤続0年を100として、同一職種でより責任が重い仕事をする場合の指標です。

上の表は、「能力・経験調整指数」の段階ごとの数値を示した表です。

難易度が高い業務に派遣社員が従事する場合、この「能力・経験調整指数」が高いものとなり、時給へ影響します。

注意したいのが、調整指数の〇年とは勤続年数ではなく、能力や経験がその年数勤めた域に達しているかどうかの指標になります。つまり、1年しか務めていなくても、3年相当勤めた技術を収めていれば3年の「能力・経験調整指数」で計算します。

通勤手当

通勤手当を支払う場合、実費で支払うのであれば、賃金額が高くても低くても影響ありません。
一方で、通勤手当を時給に含めて支給する場合や、1日の上限額を定める場合、一般賃金以上になるようにしなければなりません。2023年度の通勤手当の最低額は71円と、2022年度から金額の変更はありませんでした。

退職金

退職金は、以下の3種類のいずれかの取り扱いをしなければなりません。
①退職一時金の制度を設ける
②時給に退職金を上乗せして前払いする
③中小企業退職金共済、確定拠出年金を利用して積み立てる

の退職金制度については、指標となる統計が複数示されています。
その中でも、最も利用されている東京都の「中小企業の賃金、退職金統計」は更新されていないため、この統計に基づく退職金制度を見直す必要はありません。
中央労働委員会の「賃金事情等総合調査」のみ新しい統計に更新されています。この統計を基準として退職一時金制度を設計している場合、改定が必要となります。

②③の制度については、時給に上乗せして支払うか、積み立てすることになります。2023年度は、時給の5%分上乗せすることと決まりました。今年度の6%から1%引き下げとなります。

来年度の試算をお早めに

まずは、来年度の職種別賃金を使用して、賃金額がどうなるのか試算してください。
派遣料金の引き上げが必要な場合、派遣先と交渉を始める必要があるでしょう。

一般賃金は、統計に基づき作成されているので、世間の賃金動向を反映しています。派遣先が直接雇用しようとしても、一般賃金より安い時給では人が集まりにくい。そのことを派遣先に説明する必要があります。

2023年度は、ほどんどの職種で賃金が上がります。
しかし、逆に引き下げられる場合。以前取り上げた記事があるので、こちらが参考になります。

一般賃金が引き下げられる場合、派遣社員の時給を下げることができるのか。
結論から申しますと、一般的には不可能です。その詳細について述べた記事になります。


ユアサイド中宮

解説者

社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員

社会保険労務士 中宮 伸二郎

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。

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