<コンサルタント山内氏が解説>無期雇用派遣のメリットと転換への進め方
渡辺部長
こんにちは。私は、派遣会社の営業部長をやっている渡辺と申します。派遣業界向け経営支援のエキスパートである、コンサルタントの山内さんに色々教えてもらえるってことで、やって来ました!
山内氏
こんにちは。株式会社人材ビジネス経営研究所 代表の山内 栄人です!
私は、請負現場を複数立ち上げ⇒派遣の担当者マネージャー支店長を経験したのち、船井総合研究所に入り、派遣・請負のコンサルタントを8年勤めその後独立。人材ビジネス業界に携わり20年。現在、約140社が参加する高付加価値型アウトソーシング研究会を主催しています。
渡辺部長
無期雇用派遣について詳しく教えてもらえますか?
山内氏
では、解説していきますね~!

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【おさらい】 派遣業界における無期転換

渡辺部長
法定要件で、無期転換ルールがどういうものか、おさらいをお願いできますでしょうか?

派遣業界における無期転換というのは、大きくわけて2つのお話があります。

1つ目が、これは派遣業界に限らずの話になるんですが、有期雇用の方が反復して5年以上勤めている場合に労働者側から無期転換の要望があった場合、会社側はそれを拒否することができません。

労働契約法という法律があって、これがまず走っております。これは非正規の方(パート、アルバイト、契約社員、派遣社員)、すべてのみなさんに適用されます。

そして、多くの派遣会社が2ヶ月とか3ヶ月、長い場合でも半年、1年みたいな形で有期雇用を結んで反復して派遣社員の運用をされている会社が多いと思うのですが、その派遣社員が丸5年を迎えた時点で無期転換を希望した場合に、これを拒否することができません。

2つ目に、派遣は抵触日というものがあって(抵触日も2つあって事業所と個人がありますけど)、個人で3年間を迎えた場合に、それ以上同じ派遣先で同じ仕事はできません。

もし続けたい場合、直接雇用か無期転換か、この2択となるなかで、無期転換をしていくケースも必ず出てくるのかなと思います。大きくは、5年の無期転換と同じ派遣先、同じ業務で3年を迎えた場合の、抵触日の対応での無期転換。これが派遣業界における法律的な見解での無期転換の話ですね。

【実態】無期転換が広がる業種は?

渡辺部長
無期転換は、どういった業種で特に広がってますか。

私の感覚値の部分もあるのですが、かなりの会社がすでに無期転換というものをやっておりますね。おそらく無期転換を一切やっていない、という派遣会社はかなり少数じゃないかな、と思っております。ほとんどの派遣会社、それはもちろん質問でもありましたように業種でいくと販売系、事務派遣はもちろんですし、製造作業系、技術系は、もともと無期転換の方が多くおられます。

おそらく、ほとんどのジャンルで無期転換というものを避けては通れない状況になっているかと思います。ただ、若干残るものでいくと、短期系の派遣会社は無期転換の方がほとんどおられないです。ここが例外ぐらいであとは、ほぼ無期転換は避けられない問題になってきているのかな、という印象を持っております。

無期雇用派遣のメリットデメリット

渡辺部長
無期転換に際して、
メリットやリスクはどんなことがあるでしょう?

山内氏:
無期転換をやるかやらないか議論に関してお話すると、手前味噌ですが私自身はかなり昔から、この無期転換のセミナーをやってきた人間です。当初、この無期転換の話をし出した頃は、多くの派遣会社が「無期転換なんてやれない!やりたくない!」っていう風に言ってました。

先ほどお話ししたように、ほとんどの派遣会社が今は無期転換をやらざるを得ない状況になっています。そのメリット・デメリットをお話します。

もし無期転換をやらなかった場合…ですが、そもそも5年たったら無期転換を拒否することができません。

「無期転換をしたくない」という派遣会社が、それを完全に跳ね除けようと思ったら、5年を迎える前に何かしらの理由をつけて雇い止めをする、ということをしなきゃいけないんです。ただ、これも労働契約法の中にあるんですけど、「概ね一定数反復して更新をしている」、これは法的な見解で「雇止め法理の法定化」というのですが、3回以上更新しているかもしくは1年以上を反復して雇っているか、これらの場合、「理由のない雇い止めは、成立しない」と書かれています。

明確な理由がないまま雇い止めはできません。例えば「派遣先の仕事がなくなったから、この仕事はもうできません。」これはわかります。ただ、「5年が近づいてきたので、あなただけ辞めてください。他の方は続いてます。」

これは、理由にならないんですね。もし、無期化をしたくないからと言って、無理くりやった場合、外部に相談されたりとかして、最悪の場合、紛争になるかもしれない。こんなリスクもあるわけです。

さらに、3年を迎えた時に、無期をしたくない場合は、他の派遣先に振らないといけない。そうなるとその人が、辞めるかもしれないとか色々なリスクがあります。お客さんからも、3年勤めた人をそのまま使ってほしいという声も当然あります。

「じゃあ、直接雇用しようよ」って話ですが、「直接雇用はしたくない」。そういう派遣先さんってかなり多いと思います。こういった機会損失であったり、紛争のリスクを抱える。これが無期をしなかった場合の、リスクなわけですね。

一方、無期転換した場合、先ほどの問題は全部解消されていくのですが、じゃあ無期転換したら全くリスクがないかっていうと、そういうわけでもありません。

いざ派遣先の仕事がなくなった場合、無期雇用してるわけですから「ごめんね。ちょっと仕事がなくなったので、ちょっと休んでてくれるかな。」ってわけにはいかないんですよね。

雇用契約をいったん切っちゃう、ってことも難しいわけですよ。無期ですから「解雇」ということになってきます。通常の無期雇用正社員の方同様に、適切に解雇をしようと思ったらできます。

ただですね、派遣は派遣法の中に(皆さんの契約書の中にも必ず入ってますが)「派遣先との派遣契約切れを理由に解雇することはできない」って書いてあるんですよ。だから派遣先が終わったからっていうことを理由に解雇は、基本的にはできないんですね。

なので、仕事がなければ「自宅待機で最低でも6割補償を払わなきゃいけない」「派遣先からお金をもらってないけど払わなきゃいけない」こういうリスクが付きまとうわけですね。

このリスクの天秤です。

私が思うにはですね、その振り先を作るっていうことが派遣業界の仕事なわけですから、当然年齢が年々上がっていくわけです。

無期にした頃は、まだ若いから振り先が結構あったけど、5年10年経って振り先がない方が仕事がなくなっちゃった場合にどうするんだ?

これをやはり派遣会社はリスクとして考えて、次の一手を打っておかないと大変なことになるかもしれないです。

これはもう最初から言い続けてきたことなんですけど、トータルで天秤にかけると先ほど言った労契法の5年という問題があって、多くの会社はリスクを考えると渋々無期化するわけです。

渋々無期化をするのであれば、もう3年の時点で無期化をするべきではないか?というのが、当時から一貫して私が言っていることです。そのへんのことを天秤にかけて考えていただいたらただ多くの会社が無期を拒否できないというのは、労契法5年の問題ってのがあってやっぱり無視できないんですよ

だったらちゃんと無期と向き合って(シャレじゃないですよ!(笑))適切に対応していくっていうことが、派遣会社としては望ましい道なんじゃないのかなっていう風に私は思ってます。

無期雇用派遣派遣先やスタッフの受け止め方は?

渡辺部長
無期雇用派遣への転換について、派遣先企業や派遣スタッフはどのような
受け止め方をしているのでしょうか。

山内氏:これも私が現場を見ている感覚なんですが、派遣先さんから見ると、無期転換をしたという理由だけで本人の支払い賃金が上がるわけではないにもかかわらず15%とか20%値上げをしてくるってのは、ちょっと納得がいかないというケースがちらほらとあります。

あまりにもその辺が引っかかってる派遣先さんは、「だったらもう無期は受け入れなくていい。その方は、他に入れていただいてウチには新しい方を元々の金額でイチから派遣してください。」なんてていう派遣先さんも出てきています。

お金が厳しい派遣先さんはそういう見解もあったりしますが、結局のところは「長年居てくれて戦力化されている人なんで仕方がないな」と飲む派遣先さんもいらっしゃいますし、

逆に派遣会社側が「だったらもう、今まで通りの金額で結構です。」って折り合ってるケースもあって、まずこのお金の問題が出てきております。

続いてスタッフ側の話を見ていくと、いろんなところで調査結果が出てるんですけど有期雇用の方が無期転換したいかというとあんまりしたいと思ってないっていうのが、もう透けて見えております。

単純に、責任が増える/面倒くさい/なんか怖い/ こんな感覚の方がまだまだいるということです。

実際、私がYouTubeをやってて、派遣社員の方から日々相談が来るんですけど、無期化を飲むべきか飲まないべきかどう思いますかという相談は結構多いんですよ。

なので、その辺は派遣会社側の説明不足という気がします。実際、私が顧問先の派遣会社に指導する際には、以下のような説明をするように言っています。

「無期になったからといって皆さんの権利は何一つ減りません。職業選択の自由を奪われるわけじゃなく、嫌な仕事だったら、嫌って言っていただいて結構です。強制労働をする気は毛頭ないです。

今の仕事がなくなったとしたら次の仕事が気に入れば行けばいいし、気に入らなければ辞めるというのは今の登録型派遣と何ら関係ないですよね

もし万が一派遣会社が次の仕事を用意できなければ、休業補償を受けられるんですよ。皆さんには何も奪われることがなくて、むしろ権利が付与されるだけなんです。まずは無期をされたらどうですか?」

そのように説明するとだいたい、派遣スタッフさんは「わかりました」ってことになります。なので、その辺やっぱり説明が足りてないなっていうのが私の実感です。

派遣先・派遣社員にきちんと説明をして、問題が起こらないように進めていく、これが重要なんじゃないかと思います。

無期雇用派遣進めていく上での注意点や段取りのコツ

渡辺部長
無期転換を進めていく上での注意点や段取りのコツはありますか?

山内氏:
無期転換をすると何が起こるか。その派遣という仕事は変わっていく仕事にもかかわらず、無期になるわけですね 。

皆さん結構、勘違いをされているんですが、

例えば、事務の仕事をしていた方が無期転換をして事務で無期だということの契約をしてしまうと、この方はもうずっと事務の仕事をあてがわなきゃいけません。もし万が一派遣会社が、事務の仕事がなくなった場合、どうなるかっていうと休業補償を払うことが確定しちゃうんです。

この辺の要は、自由度を上げて無期にしておかないといけないという点が一つ挙げられます。

さらに、労使協定でされている会社が多いと思いますので、労使協定の協定書の内容と無期転換の場合の兼ね合いであったり、同一労働同一賃金であったりと結構考えなきゃいけないことはいっぱいあります。

その話だけを説明すると1時間でも足りなくなってしまうんですけど、サクっと言えることは、

無期転換になってかなり時間が経っておりますし、派遣法を改正してそこそこ時間経っておりますので、皆さんの会社が契約をしている、社労士の先生に改めて点検とか整備とかを聞いてもいいでしょう。

ちょっと心配だなと思われるようであれば、派遣業界に詳しい社労士の先生というのも一定数おられますので、この件だけ別途今契約してる社労士とは別に個別案件としてご相談いただくってのもいいでしょう。

今回のお話のまとめをしますと、

無期転換というのは、皆さんが嫌だと言っても法律があるわけですし、避けて通れないケースが多いです。それを避けて通ろうとする「無期が嫌だ!絶対やりたくない!」という派遣会社さんは、もう派遣業をやめた方がいいです。

有料職業紹介の紹介事業者になった方がいい。そういうものですから。

それぐらいの話だと思ってやっていただきたいし、だからといって適当にやると将来紛争の元でもあるんでしっかりと法律の肝を押さえて運用することで、皆さんの会社の売り上げを維持し、派遣スタッフも権利が守られ、そして大きな問題が起こらないです。

この記事でドキッとした方は、今からすぐ動いていただいた方がいいんじゃないかなと思います。

じゃあ、今回はこれぐらいで終わろうかと思います。
ありがとうございました。

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人材ビジネス経営コンサルタント 山内 栄人 氏

株式会社人材ビジネス経営研究所 代表取締役
株式会社過去オール善 代表取締役
高付加価値型アウトソーシング研究会 主催
▽全国の派遣会社約140社が正会員として加盟
https://www.jinzai-biz.co.jp/studygroup/studygroup.html

請負現場を複数立ち上げ、派遣の担当者、マネージャー、支店長を経験したうえ船井総合研究所に入り、派遣・請負のコンサルタントを8年勤め、その後独立。派遣業界の地位向上、不本意型の派遣社員を一人でも減らすべく活動中。

現在はYouTubeチャンネルをエイジン名義で毎日更新。派遣の情報も豊富に発信中!
▽『リアルゲームチャンネル(リアルをゲームのように攻略するチャンネル)』
https://www.youtube.com/channel/UCOR3wQK7wI3qfTCPrf1SqCQ

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