労災保険の対象となる新型コロナウイルス感染事例

こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。

新型コロナウイルス感染症の第5波は治まりつつありますが、今後の流行状況は予断を許さないところです。新型コロナウイルスの感染原因が業務である場合、労災保険を利用して治療、休業補償給付の支給を受けることになります。昨年から、2021年8月20日までの新型コロナウイルス感染症に関する労災支給件数は、12,430件となっており、申請の97%以上が労災認定されています。今回は、新型コロナウイルス感染症に関連する労災保険の申請について解説します

※この記事は 2021年10月4日時点の情報を元に解説しています。

労災保険の対象となる場合

医療従事者・介護従事者

業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険の対象となります。

医療従事者以外

個別の事案ごとに調査の上、業務との関連性が認められた場合、労災保険の対象となります。労災保険の対象となるか否かの判断は、次のように判断します。

a:複数の感染者が確認された労働環境での業務
「複数の感染者」とは、当事者を含めて2人以上の感染が確認された場合を指します。同じ職場の労働者以外にも施設利用者等労働者以外が感染している場合も含まれます。ただし、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないとされています。

b:顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境での業務
小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しているとされていますが、他の業務でも、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)を判断するとされています。

申請手続き

基本的に通常の労災保険の申請と変わりませんが、新型コロナウイル感染症特有の手続として、業務内容を確認するための書類や、発症前14日間の行動記録に関する申立書などの提出を求められることがあります。

また、通常、休業補償給付を請求する場合、休業補償給付請求書(いわゆる8号用紙)に医師の証明を記載してもらわなければなりませんが、ホテル療養・自宅療養など受診せずに療養する場合、保健所から発行される「宿泊・自宅療養証明書」、「就業制限通知書」、「就業制限解除通知書」を8号用紙に添付して提出します。

なお、濃厚接触者が自宅待機している期間については、「病気」ではないことから、労災保険に休業補償給付を請求することはできません。


ユアサイド中宮

解説者

社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員

社会保険労務士 中宮 伸二郎

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。

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