2020年4月1日に改正される労働者派遣法の対応として労使協定方式を用いる場合、派遣社員の賃金は、局長通達の一般賃金×地域指数以上でなければなりません。地域指数は、派遣先事業所所在地により決まります。地域指数の事業所は、原則として雇用保険適用事業所となりますが、雇用保険未設置の就業場所であっても、雇用保険を適用することができる基準を満たす就業場所であれば、その場所の地域指数を選択することができます。
2019年11月1日公表の労使協定方式に関するQ&A【第2集】によると、事務の簡便化のために本社のみを雇用保険適用事業所とし、支店や工場を適用事業所としていない場合であっても、支店や工場が次の条件を満たしている場合、その場所の地域指数を用いても差し支えないと考えられます。
地域指数の選択対象となる事業所の要件
・他の事業所等の場所から独立していること
・経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度独立していること
・一定期間継続し、施設としての持続性を有すること
上記の要件を満たさない小規模就業場所や臨時的就業場所は、記号の組織図における直近上位の雇用保険適用事業所の所在地の地域指数を使用します。
地域指数は、都道府県別とハローワークの管轄別に定められています。都道府県別とハローワーク管轄別どちらの指数を選択するかは、派遣元の判断によりますが、派遣社員の賃金を低くする目的で使い分けることは認められません。
例えば、
・新宿(117.0)で働く派遣社員Aさんには、都道府県別(東京都:114.1)の指数を適用。
・立川(108.5)で働く派遣社員Bさんには、ハローワーク管轄別(立川:108.5)の地域指数を適用。
といった使い分けはできません。
都道府県別指数とハローワーク管轄別指数の使い分けは、原則できないことになっていますが、合理的な理由があれば認められる可能性があります。
その理由は「派遣社員の賃金が安くなる」ではもちろんNGです。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。