2021年4月1日以降の一般賃金に対応した労使協定は、3月末までに締結しなければなりません。有効期間2年の協定を締結している場合であっても、自社の賃金テーブルが2021年4月以降の一般賃金を下回る場合は、再度協定を締結し直す必要があります。また、下回らない場合は、一般賃金と同等額以上であることを確認した旨の書面を労使協定に添付しなければなりません。ということで、今回は、労使協定締結手順についてご紹介します。
※この記事は 2021年1月7日時点の情報を元に解説しています。
目次
【Step.1】対象となる職種の次年度一般賃金と4月以降賃金の比較
厚生労働省が公表している2021年度の額(以下リンクを参照)と、4月以降の予定される賃金を比較します。
◇賃金構造基本統計調査 職種別平均賃金
https://www.mhlw.go.jp/content/000685358.pdf
◇職業安定業務統計 一般基本給・賞与等の額
https://www.mhlw.go.jp/content/000685359.pdf
◇地域指数
https://www.mhlw.go.jp/content/000685420.pdf
現時点の賃金が一般賃金未満であったとしても、評価に基づく昇給や昇格に伴う昇給によりクリアできることもあります。4月以降の賃金が一般賃金を下回る場合は、一般賃金額まで昇給させなければなりません。
具体的な計算方法
【Step.2】例外的取り扱い(昨年の一般賃金の適用)を検討
2021年度に限り、労使合意の上、2020年の一般賃賃金を用いることが認められています。このような例外的取り扱いを適用する場合は、事業所および地域・職種別の事業活動状況に関する資料を準備する等手続きが煩雑となります。例外的取り扱いの適用をお考えの場合は、速やかに事業活動状況に関する資料を作成し、適用の可否を検討する必要があります。具体的な手続き方法を、以下記事で解説しています。【Step.3】労働者代表の選出と労使協定の締結
代表者の任期を定めていない場合、締結の都度選出しなければなりません。代表者の任期をどのように定めるかについては、労働者が自主的に決定することとなります。ただし、派遣の労使協定が最長2年であることから、代表者の任期も2年以内が望ましいと思います。
労働者代表選出を適正に実施しなければなりません。(選出方法については、以下記事で詳しく解説しています)また、労使協議も説明もせずにサインさせることはせず、説明の上、意見を求める等の丁寧な手続きが求められます。特に【Step.2】の例外的取り扱いを適用する場合は、労使協議の議事録を作成しておくことをお勧めします。
【Step.4】協定の周知
締結した労使協定を労働者に周知しなければなりません。都道府県労働局の定期指導において労使協定の周知が不十分と指摘を受ける事例も多発しております。再度協定を締結するこの機会に周知方法を再検討してください。
労使協定方式の労使協定の周知方法
① 書面の交付
② 労働者が希望した場合、ファクシミリ、電子メール等の送信
③ サーバー等に保存し、労働者が常時確認できるようにする(派遣労働者にログイン・パスワードを発行し、イントラネット等で常時確認できる方法等)
④ 常時派遣元の事業所に掲示または備え付ける(労使協定の概要について、①又は②の方法によりあわせて周知する場合に限る)
概要に記載することが望ましいとされる事項
・労使協定の対象となる派遣労社員の範囲
・派遣社員の賃金(基本給、賞与、通勤手当、退職手当等)の決定方法
・比較対象である「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」
・有効期間
なお、派遣社員が希望する場合は、労使協定を書面の交付等により周知することが望ましいとされています。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。