来年の一般賃金に、令和2年度(2020年)の一般賃金を適用できる?

令和3年度4月1日から適用される一般賃金に関する局長通達が公表されました。一般基本給・賞与については、ほとんどの職種で引き上げとなることから、新型コロナウイルスの影響による雇用情勢の悪化を踏まえ、令和2年度の一般賃金を使用する特例が認められています。今回は、令和3年度一般賃金に関するQ&Aです。
※この記事は 2020年10月27日時点の情報を元に解説しています。

令和3年度一般賃金の指数

賞与指数変更なし 0.02

能力経験調整指数 変更あり

1年2年3年5年10年20年
令和2年116.0126.9131.9138.8163.5204.0
令和3年116.8125.4129.5136.8157.4196.8
一般通勤手当変更あり 74円(令和2年72円)
退職金割合変更なし 6%
退職手当調査賃金事情等総合調査(中労委)のみ更新
中小企業の賃金・退職金事情(東京都)変更なし

【1】令和2年度の一般賃金を適用するためにはどのような手続きが必要ですか。

例外的な取扱いとなるため、厳しい条件が課されています。令和2年度の一般賃金を適用するためには、次の3つの手続きが必要です。
①労使協議、②労使協定への記載、③労働局への届出。

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①労使協議
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労使協定締結時点で、新型コロナウイルスの感染拡大により、事業活動を示す指標が現に影響を受けており(*1) かつ、当該影響が今後も見込まれるもの(*2)であること等を具体的に示し、労使で十分に議論を行うこと。

(*1)「事業活動を示す指標が現に影響を受けており」として示すべき事項
・事業所全体の事業縮小状況を示す資料
・職種、地域ごとの派遣契約数の減少や新規派遣契約数が減少していること

(*2)「今後も見込まれるもの」として示すべき事項
(*1)の動向を踏まえた令和3年度中の派遣契約数などへの影響の見込み(契約数見込み)

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②労使協定への記載事項
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・派遣社員の雇用維持・確保を図ることを目的とする旨
・一般賃金の額(令和2年度)を適用する旨及びその理由
 労使協議で検討した指標を用いた具体的な影響等を記載(主観的・抽象的な理由のみでは認められない)
・労使協定の内容を令和3年度中であっても見直しができる旨を、記載することが望ましい

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③労働局への届出事項
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・派遣社員の雇用維持・確保を図るために講じる対応策
 (雇用維持に関する具体的対応策が必須となります)
・事業活動を示す指標の根拠書類
・一般賃金の額(令和2年度)が適用される協定対象派遣社員数等

【2】どの程度指標が低下していれば、特例措置を適用することができますか。

労使協議により検討すべきことですが、通達で雇用調整助成金の要件である事業活動を示す指標が5%以上の減少を例示していることは参考になります。ただし、減少率が大きければ自動的に特例措置が適用されるものではありません。適正な手続きを経ずに特例措置を適用した場合、労使協定が無効となり、派遣先均等均衡方式が適用されることになります。


ユアサイド中宮

解説者

社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員

社会保険労務士 中宮 伸二郎

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。

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