<コンサルタント山内氏が解説>請負化について解説
渡辺部長
こんにちは。私は、派遣会社の営業部長をやっている渡辺と申します。派遣業界向け経営支援のエキスパートである、コンサルタントの山内さんに色々教えてもらえるってことで、やって来ました!
山内氏
こんにちは。株式会社人材ビジネス経営研究所 代表の山内 栄人です!
私は、請負現場を複数立ち上げ⇒派遣の担当者マネージャー支店長を経験したのち、船井総合研究所に入り、派遣・請負のコンサルタントを8年勤めその後独立。人材ビジネス業界に携わり20年。現在、約140社が参加する高付加価値型アウトソーシング研究会を主催しています。
渡辺部長
請負について詳しく教えてもらえますか?
山内氏
では、解説していきますね~!

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【解説】請負化のメリット

渡辺部長
請負化を行うことのメリットとは、どのようなものがありますか?

山内氏:
通常の派遣では、派遣先からあれこれと要求がくるのですが、人事権がこちらにある請負はその心配がありません。また、派遣ではなかなか使いにくい人材。例えば主婦や学生、シニア層などをシフトで回しやすいメリットが上げられます。もう1点メリットを挙げると、社会保険料や有給使用率の影響を減らし、利益率を上げることができます。

【解説】請負化の利益構造とは

渡辺部長
製造派遣から請負に切り替えがうまくできた場合、収益性に違いが出てくるのでしょうか

通常の派遣の場合、派遣社員に渡す時給から、社会保険・有給・交通費などを引いて利益を出す。これが基本の考え方です。

請負の場合は少し複雑です。製造請負ということでお話をさせていただきます。
製造請負なら、報酬は出来高です。成果1つあたりいくら、という計算になります。成果の積み重ねで月の売り上げを計算して、そこから人件費を払うという形です。

通常の派遣と違い、請負は赤字がある。これが一番大きなポイントです。
製造派遣ならマージン率32~35%。社会保険・有給・退職金を加味して粗利20%前後くらいが相場です。請負事業の粗利率は30%前後くらいですが、何かトラブルがあった場合は20%を切ることもあります。売上低下などの影響を受けるので、通常の派遣とはかなり利益構造が違います。

<実践>請負に転換するには

渡辺部長
製造派遣から製造請負へ切り替えをする時に、具体的にどのように進めていくのがいいんでしょうか

残念ながら、製造派遣から製造請負へすんなり転換できる会社は少ないと思われます。なぜなら、派遣は「人を派遣する」というビジネスモデルなのですが、請負は「仕事を請け負う」ということだからです。つまり、QCD(品質・コスト・納期)を自分で管理できるような会社でないと請負は難しい。

私が現役の頃、定期的に製造の勉強会を行っていました。QCサークル(自己啓発・相互啓発)や5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)、安全パトロールなど。本業が製造業である会社と変わらないようなことをやっていました。

そういったノウハウがない会社がいきなり請負をやろうと思っても、おそらくできない。「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」が何なのか答えられない会社がほとんどだと思います。いきなり製造業ができるわけがない。まずはユニット型派遣でエリアを区切り、自社で完結した体制を作っていく。ユニット型派遣を運用していく中で、お客さんからいろいろ学ばせていただいたり、物作りの勉強を進めていく。まずはこのような形から始めていくのがいいのではないでしょうか。

<事例>請負の実態

渡辺部長
請負化がうまくいった成功事例があれば教えてください

私はもともと、請負のコンサルタントとしてスタートしました。
請負の魅力はたくさんあります。まず、1番の魅力は「人が育つ」ことです。

通常の派遣の場合。単純に人を送っているだけなので、人が育つことがあまりない。
派遣社員も、自身が派遣社員であるという認識のまま。

しかし、請負はチームで運用します。
案件が終わった際には、BBQやボーリングなどの打ち上げなども行いますし、一体感が出て定着が良くなります。チームのリーダーは、派遣会社が自分の会社であるという意識になります。
請負社員の中には時給の者もいましたが、その人たちでさえ「売上」のことが頭にあるようになります。「先月は忙しかったので売上が何%伸びました」という利益に関することを言うことによって、チームで頑張るという意識が育ちます。

請負のリーダーを内勤に上げるという事例があります。物作りも現場も知っていて、さらにマネジメントも経験している人が内勤になる。これはすごいメリットです。

通常の派遣と請負を行っている会社が、請負の比率を上げていって、営業利益を5%以上向上させた例もあります。通常の派遣だけだと、この数字は難しい。しかし、請負なら簡単にできてしまうこともあります。

お客さんとの関係が強固になる点も魅力です。通常の派遣だと、上下関係があり、派遣元はアゴで使われるような関係になってしまう部分があります。しかし、請負の場合、限りなくパートナーに近い。こうなれば、こちら側から要求だってできます。

ハードルは高いですがメリットも大きい。ぜひチャレンジしていただきたいですね。

まとめ

請負は簡単にできるわけではありません。
デメリットにあまり触れなかったので、少し話しておきましょう。

適切に請負を運用できていないと、偽装請負・みなし雇用と認定される危険があります。なので、無計画に行えるものではありません。

しかし、一定のエリアの独占ができれば他社との差別化につながります。コロナ禍のような事態が起こったとしても、通常の派遣より、請負は仕事を減らされにくい実態があります。

私は10年以上に渡って、「右から左へ人を送り出すだけの派遣サービス」は付加価値が低すぎると言い続けています。価格ダンピング(不当に安く買いたたかれる)が起こり得ますし、ずっと続けていくのが難しいのが現状です。請負というのは、通常の派遣との差別化につながりますし、付加価値がある作業・サービスになります。ぜひ本腰入れて挑戦していただきたいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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人材ビジネス経営コンサルタント 山内 栄人 氏

株式会社人材ビジネス経営研究所 代表取締役
株式会社過去オール善 代表取締役
高付加価値型アウトソーシング研究会 主催
▽全国の派遣会社約140社が正会員として加盟
https://www.jinzai-biz.co.jp/studygroup/studygroup.html

請負現場を複数立ち上げ、派遣の担当者、マネージャー、支店長を経験したうえ船井総合研究所に入り、派遣・請負のコンサルタントを8年勤め、その後独立。派遣業界の地位向上、不本意型の派遣社員を一人でも減らすべく活動中。

現在はYouTubeチャンネルをエイジン名義で毎日更新。派遣の情報も豊富に発信中!
▽『リアルゲームチャンネル(リアルをゲームのように攻略するチャンネル)』
https://www.youtube.com/channel/UCOR3wQK7wI3qfTCPrf1SqCQ