私は、請負現場を複数立ち上げ⇒派遣の担当者⇒マネージャー⇒支店長を経験したのち、船井総合研究所に入り、派遣・請負のコンサルタントを8年勤め⇒その後独立。人材ビジネス業界に携わり20年。現在、約140社が参加する高付加価値型アウトソーシング研究会を主催しています。
▽この記事と同じ内容を動画でも視聴できます。
目次
【解説】育成型派遣とは?
山内氏:
世の中によくある派遣。それが何なのかっていうのを超簡単に言っちゃえば、派遣先さんから派遣社員のオーダーをいただいて、そのオーダーを求人広告に出したり、自社のデータベースに登録されている方とマッチングをして見つけ出して、その方を派遣する。そういうビジネスモデルだと思うんですよね。
一方、育成型というのは、お客さんから仕事を取ってくるってのは一緒なんです。ただ、仕事を取ってきたとしても派遣する人がなかなか見つからないという状況の中、派遣できるだけの能力を有していない方に対して、派遣会社が基礎教育を施して派遣をする。育成型とは、こういった類のものです。
イメージとしては、SEであったり、プログラミングの仕事、Webのコーディング、CAD、施工管理であったりこういった比較的、知識経験スキルが必要な職種を自社で育成をする。これが育成型派遣ということになってきます。
【解説】教育型派遣がなぜ重要になってくるのか
この記事を見ていただいている時期にもよると思いますが、人手が足りないと採用しても落ち着かないっていうふうに思っていらっしゃる、派遣会社さんは結構あると思うんですよ。
世の中的にですね、年々派遣先さんの要求事項が上がってきていると感じている人も多いと思います。
リアルな例ですと、作業系の派遣をしていた会社で、今までは「手さえを動かしていればいい」という仕事だったんですけど、その中に端末をさわる業務が増えてきて、最低限でもパソコンを多少さわれる方という条件がついたとしましょう。
そして、パソコンがさわれる方で募集を出したものの、その時給ではなかなか応募がない。そうなったとき、求人広告費をどんどん増やして「来ないな」「来ないな」ってお金を払うぐらいだったら、「パソコンさわれない方も仕事をしながらパソコンをさわれるようになりませんか?」と打ち出し、自前で教育しちゃった方が早いと思いませんか?広告にお金を払うのか、教育にお金を払うのか、その天秤だっていうふうに思っていただいたらこの先の展望もちょっと見えてくるんじゃないかなと思います。
<ポイント>集めたい属性を定めて適切な打ち出しが必要
例えばの話、作業系をやってらっしゃる派遣会社が、作業系の派遣社員を募集する媒体で「スキルアップしませんか」って言っても応募は来ないですよ。
はっきり言うと、集めたい属性をもっとマーケティングしていかないといけないなって思います。
さらに、どの領域まで皆さんの会社でやれるのか、ということです。SEになってある程度ちゃんと戦力化していたら、派遣社員であったとしても年収1千万とか超える方もいますし、その後、独立する方もいれば、どこかの直雇用でエンジニアをやられるケースもあります。施工管理の世界なんかでも未経験から一定期間で、年収500万600万。本当にすごい人は1000万を超える方もいるっていう世界だったりするわけです。
そういったモチベーションと希望を持っている方に来てもらわないと、会社もうまくいかないし…ということなんです。
作業にちょっとパソコンをさわる程度っていうぐらいだったら、募集もそんなに変わらないかなっていう気がするんですけど、属性をまるっきり変えようと思ったら、採る媒体も違えば、出す広告も違うし、全然違うものになってきますね。
育成型派遣をやってらっしゃる会社は、新卒でどんどん取ってらっしゃいますし、なのでこれについては、頭の切り替えが必要じゃないかなと思いますね。
<事例> 育成型派遣の成功ケース
山内氏:
まず派遣会社は、年8時間、3年間のキャリアアップに資する教育訓練をやらなきゃいけないってことになってるわけですよ。
そして、「ほとんどやれてないのが20%」。やれてないってのが実態ですから、これをまず取っかかりとしてやっていただくってのがまず先です。厚労省が言っているものですから、教育訓練をやりつつ、派遣社員もスキルアップしつつ、派遣先のオーダーをこなしつつ、三方良しな話ですからここから取り組むというのがまず手頃なところだと思います。
しかし、本当に教育型・育成型でやってらっしゃる会社っていうのは、もうオンラインであれ対面であれちゃんと教育体制が整ってます。例えば新卒を社員として雇っちゃって、1ヶ月ないし2ヶ月、お給料を払いながらやっていっているっていうケースが、やはり標準的なパターンですね。
これをゼロからいきなりやると、だいたい失敗されると思うんで、先程言ったキャリアアップ訓練の一環から始めてください。そして、もうちょっと上の世界に関して言うと、働きながらキャリアアップ8時間を超えた部分の教育を本人負担なしで行う。
ただ、これはもうキャリアアップ制度の教育訓練ではないから「賃金は出ないけども、お金は取らないよ」「無償で、有給ではなくて無給で教育訓練を実施していく」みたいなこともやっていく。先ほど言ったように1ヶ月から2ヶ月場合によっては3ヶ月お給料を出しながら、毎日朝から夕方まで教育訓練をして派遣先に出せるようにしていく、ってのが本当に最終段階勝ちパターンはこれだと思います。
しかし、なかなかそこまで一気にポーンとはいけないと思うので、順番にステップを踏んでいただいたらいいんじゃないかなと思います。
<まとめ>教育訓練や育成型派遣の本当の意味
山内氏:
コロナになって自動化が加速していっています。例えば、ファミレスでオーダーしたらロボットが持ってくるとか、レジが無人になっているとか、どんどんそうやって人がやっていた仕事が自動化していると思うんですよね。
派遣社員が使われた領域も、どんどん自動化をされていく。そういうことを考えると必然的に要求される仕事のレベルが上がっていくんですよ。今までだったらマッチングできた人たちが、ズレちゃってマッチングできない。お客さんは、こういうスキルを持った人が欲しいです。でも皆さんの会社に来る人はそのスキルを持っていません。噛み合いませんってなったときに、お客さんに「すいません、なかなかいい人見つかりません」と言いながら、求人広告費だけ払って「いい人が見つからない、稼働しない」っていう状況になることが、容易に想像できます。
なので今いきなりその状況にならなくとも、既に始まってて、ちょっとずつ広がっていってると思うですよ。その証拠に、今、皆さんの会社で問い合わせは来るけど、派遣できないっていうケースは増えてきてると思うんです。
これがもう、どんどん広がっていくっていうことを考えたら早め早めに着手をして、この差を埋められる会社が将来勝つことはほぼ間違いないなと思ってます。
よく考えてみて欲しいのですが、国や官僚、政治家、すごく頭がいい人たちが一生懸命いろいろ考えたりしてやっている中で、なぜ派遣会社にキャリアコンサルティングを義務付けしたのか。なぜ年8時間3年間の教育訓練の実施を義務付けたのか。
将来ズレてかみ合わなくなることを、ある程度予測した上で教育付加をする。それは、派遣会社にさせるのが都合がいいよねっていう、当てつけでもあるわけですよ。であるならば、それをしっかり受けた上でビジネスにしていく、ということは重要なことだと思います。ですので、考えて準備をしてちょっとずつでもやっていくと良いと思います。
仮に、教育訓練の実施時間が、皆さんの会社での実績が増えていくと、労働局も厚労省も文句言うどころか「頑張ってますね、昨年より増えましたね」と言って、実施報告書を出すたびに言ってもらえるわけです。ですから、それはプラスだしそれで派遣社員も「パソコンがさわれるようになった」「今まではまったくやってなかったSEになれた」もうめちゃめちゃいい話じゃないですか。国としてもいい話だし、皆さんの会社にとってもいい話だし、派遣先も派遣してくれてありがとうってなるわけですから、みんないいわけです。ぜひ真面目に取り組んでいただけると嬉しいなと思います。
じゃあ、今回はこれぐらいで終わろうかと思います。
ありがとうございました。
最下部のコメント欄にて、派遣会社の皆さまからの質問を募集しております!
日々の業務でギモンに思うことや、アドバイスが欲しいこと、中長期的な事業戦略まで、どんなことでもぜひお気軽にご入力ください。募集した質問の中から、いくつかに対して、山内 栄人 氏より動画&記事にて回答いたします。
人材ビジネス経営コンサルタント 山内 栄人 氏
株式会社人材ビジネス経営研究所 代表取締役
株式会社過去オール善 代表取締役
高付加価値型アウトソーシング研究会 主催
▽全国の派遣会社約140社が正会員として加盟
https://www.jinzai-biz.co.jp/studygroup/studygroup.html
請負現場を複数立ち上げ、派遣の担当者、マネージャー、支店長を経験したうえ船井総合研究所に入り、派遣・請負のコンサルタントを8年勤め、その後独立。派遣業界の地位向上、不本意型の派遣社員を一人でも減らすべく活動中。
現在はYouTubeチャンネルをエイジン名義で毎日更新。派遣の情報も豊富に発信中!
▽『リアルゲームチャンネル(リアルをゲームのように攻略するチャンネル)』
https://www.youtube.com/channel/UCOR3wQK7wI3qfTCPrf1SqCQ