


こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
2024年4月1日から労働契約を締結するときに明示しなければならない項目が追加されます。
今回は、有期雇用労働者が対象となる労働条件通知の追加事項である
「更新上限の有無と内容」「無期転換申込機会」について解説します。
今回の記事は前回の「2024年4月 全ての労働者が対象となる労働条件通知書の追加事項」の続きとなります。

※この記事は 2024年2月1日時点の情報を元に解説しています。
目次
更新上限の有無と内容

有期雇用の期間に上限を設ける場合、更新の上限を明示しなければなりません。
更新の上限は、通算契約期間または更新回数の上限を記載します。記載に当たって、誤解の生じないよう分かりやすい表現に努めてください。

派遣社員に更新上限を設ける場合
有期雇用派遣労働者の更新上限を3年とすることは、雇用安定措置義務を免れる目的と判断される可能性が高いです。
派遣許可更新要件の一つに「雇用安定措置の義務を免れることを目的とした行為を行っており、労働局から指導され、それを是正していない者ではないこと」があります。大阪万博関連業務や一時的な繁忙対応など業務の終期が明らかな場合以外、上限を付けることは指導対象となる可能性があります。
雇用安定措置義務が生じない3年以内(例えば2年)としたとしても、脱法的な行為と判断される恐れがあります。
新たに上限を設ける場合
初回労働契約から上限を設ける場合、上限を設ける理由を労働者に説明する義務はありません。
更新上限を新たに設けようとする場合は、更新上限を設定する理由を労働者に説明することが必要になります。また、すでに設けている上限を短縮する場合も同様に労働者に短縮する理由を説明しなければなりません。
これまで上限を設定していなかった労働者に新たな上限を設けることは、労働条件の不利益変更になります。
代償措置として正社員登用制度を整備することや何らかの経過措置を設けて、労働者の理解が得られるようにしなければなりません。
無期転換申込機会
労働契約法に規定する無期転換を申出ることができる旨、無期転換権がある労働者に対して明示しなければなりません。

明示の対象者は、通算雇用期間5年超の無期転換権がある有期雇用労働者です。通算雇用期間が5年を超えることになる契約を更新するときから明示が必要になることに注意が必要です。

無期転換後の労働条件
無期転換を申出ることができる旨を明示するときは、転換後の労働条件も併せて明示しなければなりません。

有期雇用労働者が無期転換した場合、賃金・労働時間など労働条件に変更がなければ、記載例1の記載となります。
ただし、有期雇用の間、就業場所・業務内容ともに「変更なし」としていた場合、無期転換後も変更なしでよいかどうか検討する必要があります。
特に、無期雇用派遣社員は「変更なし」のままでいると、
長期勤続の間に派遣先の変更や業務内容の変更が見込まれることから、業務命令による配置転換ができなくなってしまいます。
無期転換後の労働条件を明示する際は、その点も考慮してください。
派遣管理システム スタッフナビゲーターで実装予定の雇用契約書


解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。