有休の年5日取得を解説<派遣は取得漏れがないよう注意>

こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。働き方改革に関連して、労働者へ年次有給休暇(有休)を5日取得させることが企業に義務付けられています。労働者に有休を取得させていないことを理由に送検された事例もあり、有休の取得状況を企業は管理する必要があります。

今回は、有休5日取得の管理について解説します。

※この記事は 2023年1月30日時点の情報を元に解説しています。

【キホンの知識】有休5日取得とは

企業は、労働者に有休を年5日以上取得させなければなりません。対象となる労働者は、有休を10日以上与えられた者です。4月1日入社のフルタイマー労働者の場合、入社6か月経過時点の10月1日に10日の有休を付与します。企業は、労働者に付与した日から1年以内(翌年の9月30日まで)に5日取得させなければ、法違反となります。違反が悪質な場合は、送検されることもあり、違反1名につき罰金30万円の刑が科される可能性があります。

【例外】5日取得させなくてもOKなケース

「何かあったときのために使いたくない」と言って、労働者が有休を取得したがらない場合がありますが、労働者の意向とは無関係に企業は有休を取得させなければなりません。しかし、以下のケースは5日取得させることができなくとも法違反とはなりません。

・育児休業等により、対象となる1年間すべてをお休みしている場合
・育児休業等から復職したときに残りの所定労働日数が5日未満のため、取得させることができない場合
・突然退職したため、取得させることができない場合

一方、以下のようなケースは法違反となるのでご注意ください。

・(有休を取得できるゆとりをもって)退職を申し出たにもかかわらず、業務引継ぎや繁忙を理由に労働者に有休を取得させなかった場合
・退職時に未消化有休を買い取った結果、5日取得していなかった場合(買取は取得になりません)

【派遣会社は特に注意】労働者の「自発的取得」と企業の「時季指定義務」

労働者が自発的に取得した日数を含めて5日以上取得させる必要があります。自発的に5日以上取得した労働者に対して、さらに5日取得させる必要はありません。一方、自発的に取得しない労働者に対しては、時季を指定するなどして取得するよう働きかける義務があります。(時季指定義務)有休を取得させる方法として、労使協定による計画的付与という方法がありますが、様々な就労形態が混在する派遣会社で計画的付与を実施することは困難だと思います。そのため、5日取得の達成状況を管理し、達成が危ぶまれる場合は、取得を促していくという方法を取るケースが多くみられます。ある派遣会社では、付与から半年経過時点で3日以上取得していなければ、期間を指定して有休取得日を派遣社員に決めてもらっています。また、派遣先都合で契約期間満了により退職することになる場合は、残りの期間で確実に5日取得できるよう派遣先と調整をするケースもあります。

年次有給休暇管理簿の作成

退職時に慌てて5日取得させようとすると派遣先に迷惑をかけてしまうことになります。派遣社員に有休を確実に取得させるためには、取得状況・達成状況を把握しておかなければなりません。また、労働基準法では、有休管理簿の作成が義務付けられています。管理簿には、有休付与日、取得日数、取得した日付を記載しなければなりません。管理簿は、必要なときにいつでも出力できることを前提として、システムで管理することも認められています。

数十人、数百人の派遣社員の取得状況・達成状況を把握するためには、適切なシステムを導入することが必須と思います。


ユアサイド中宮

解説者

社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員

社会保険労務士 中宮 伸二郎

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。

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