あれから3年が経つ計算になりますが、各社どのような対応を取っているのでしょうか。
こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
2022年12月22日に労使協定の賃金等の記載状況に関する集計結果が、公表されました。待遇決定方式の選択状況に大きな変化は見られませんでした。
一方、退職金の支給状況については、退職金制度による方法が6.4%減少しています。これは何を表しているのでしょうか。
今回は、労使協定の賃金等の記載状況に関する集計結果のご紹介と、退職金支給状況の変化について解説します。
※この記事は 2023年1月5日時点の情報を元に解説しています。
目次
労使協定の賃金等の記載状況に関する集計結果の概要
「労使協定方式」のみ選択する事業所割合に大きな変化はなく、「派遣先均等・均衡方式」だけを採用する事業所が、「併用」に変更したことがうかがえます。
「併用」は、賃金を抑制するための恣意的な使い分けは認められませんが、職種や雇用区分など客観的な基準で区分することは認められています。
①待遇決定方式の選択状況
②地域指数の選択状況
③通勤手当の支給状況
④退職金の支給状況
※グラフの「その他」は、前払いや中退共の併用や、退職金規定の提出がなかった事務所の場合です。
その他の集計結果は、厚労省HPを参照してください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001027367.pdf
※前年集計は、「【調査結果】ほかの会社の労使協定はどうなってる?」をご覧ください。
退職金支給状況の変化を考える
2020年から改正法が実施され、「①退職金制度を設ける」「②前払いする」「③中退共等に加入する」のいずれかの措置を講じることになりました。
勤続3年以上を退職金の支給要件とする派遣元が多いと思われます。図④の退職金制度方式が6.4%減少している理由として、(2020年の改正法から)3年目を迎えるにあたって制度変更を行った派遣元が、一定数あることが予想されます。
退職金制度の減少に対して、中退共(中小企業退職金共済)等への加入割合が増加しています。考えられる理由としては、思いのほか継続勤務者が多く、退職金原資に不安を感じた派遣元が、中退共等への加入を行ったのではないでしょうか。
1.5%と少数ですが、前払い方式への移行もみられます。競合他社との兼ね合いで、募集時給を高く設定するためかもしれません。
退職金制度って廃止できるの?
前払い方式に移行するためには、退職金制度を廃止しなければなりません。既に勤務している派遣社員の退職金制度は、廃止できるのでしょうか。
絶対できないとは言いませんが、非常に難しいです。
退職金の受給資格が得られる勤続年数に達していなくても、既に勤務している派遣社員の退職金を廃止(前払い・中退共等に変更)することは、明らかに労働条件の不利益変更です。廃止するのであれば、以下のような措置が必要と考えられます。
・現在勤務中の派遣社員については、制度を継続する。新規採用者から順次別の制度に変えていく。
・全員一斉に廃止するのであれば、勤続3年未満の派遣社員を含めて、将来もらえたかもしれない退職金を加味した一時金を支払って清算する。
まとめ
退職金制度を作ったけど、こっそり廃止して、実際には支払わないという対応は絶対に許されません。紛争になれば会社が負けることは必至です。
一度作った制度は廃止すべきではないと思いますが、廃止するのであれば、公平な清算と十分な経過措置を検討して下さい。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。