派遣社員がパワハラ被害を申し出たら

こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。

2022年4月にパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました。今後、パワハラ被害の申し出が増えると予想されます。
今回は、派遣社員から「派遣先でパワハラを受けた」と相談された場合の対応について解説します。

※この記事は 2022年5月30日時点の情報を元に解説しています。

企業のパワハラ対応義務

厚生労働省の指針では、パワハラを相談された場合、事実関係を迅速かつ正確に確認することを義務としています。

引用:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!

事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(セクシュアルハラスメントの場合には、必要に応じて、他の事業主に事実関係の確認
に協力を求めることも含まれます(※)。)
※ 協力を求められた事業主には、これに応じる努力義務があります。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)(参照 2022-05-30)

事実関係の調査をしなかったり、被害に対して適切な措置を取らないと、企業に損害賠償が命じられることがあります。

派遣社員に対するパワハラ防止の責任は、派遣元・派遣先両方にあります。
派遣先では、パワハラに関する苦情について、誠実かつ主体的に対応しなければなりません。派遣社員からパワハラの申告があったことを理由に、不利益な取り扱いをしてはならないことを定められています。

派遣社員のヒアリング

パワハラの相談を受け付ける際には、以下の4項目に配慮する必要があるとされています。

派遣社員からパワハラの相談を受ける際、時系列で事実関係を整理してから相談されることはほとんどありません。親身な対応を心掛け、話をさえぎらず、話を聞くことが大切です。
いつ、何があって、どのように感じたのか、整理をしてください。その際にいっしょに同僚がいたか、メールや文書は残っているか等も聞いてください。

また、ヒアリングの場で「あなたに問題がある」といった指導はしないでください。仮に派遣社員に問題があったとしても、事実関係を調べる前に派遣社員に問題ありと決めつけないでください。

話を聞いたうえで、派遣先へどこまで相談内容を伝えるか、派遣社員と決定することになります。全て派遣先へ開示することを希望されることもあれば、どの派遣社員からの告発なのか特定されない範囲で対応を希望されることもあります。相談者が、希望する範囲での対応が求められます。

派遣先への調査依頼

派遣社員からの申し出内容から、派遣先関係者のヒヤリングを行います。前述した通り、派遣先はこれを拒むことはできません。派遣先と今後の対応を協議し、派遣社員へ連絡してください。

最低限、派遣元として行わなければならないことは以上になります。

派遣先との取引を優先して、派遣社員のパワハラ相談をないがしろにすると、事態が悪化してしまうことがあります。相談があった際は、速やかに対応することを心がけてください。


ユアサイド中宮

解説者

社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員

社会保険労務士 中宮 伸二郎

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。

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