【高年齢者雇用安定法改正】70歳までの就業機会確保で“派遣需要”が高まる可能性

2021年4月1日から高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業確保措置を講ずる努力義務が新たに設けられます。これまでの60歳以上定年、65歳まで継続雇用義務に変更はありませんが、この改正によって、企業は従業員が70歳になるまで何らかのかかわりを継続することになります。今回は、高年齢者雇用安定法の改正に関する解説です。

※この記事は 2021年2月18日時点の情報を元に解説しています。

「65歳まで」と「70歳まで」の違い

65歳までは、定年延長や継続雇用など定年前まで継続して直接雇用し続けることが企業に義務付けられています。一方、70歳までは雇用以外の形態を含め、幅広い選択肢が示されており、これらの選択肢の一つもしくは複数を選択し、企業は従業員の就業機会確保に努めなければなりません。

対象年齢60歳~65歳65歳~70歳
実施の程度義務努力義務
講ずる措置①65歳までの定年引上げ
②65歳までの継続雇用制度の導入
 (グループ企業での継続雇用含む)
③定年廃止
①70歳までの定年引上げ
②70歳までの継続雇用制度の導入
 (グループ外企業での継続雇用含む)
③定年廃止
④高年齢者の希望に応じ70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤高年齢者の希望に応じ70歳まで継続的に以下のいずれかに従事できる制度の導入
  a.企業が自ら行う社会貢献事業
  b.企業が委託、資金提供等する団体が行う社会貢献事業

④⑤の雇用以外の措置を導入する場合は、過半数労働組合もしくは過半数代表者の同意を得る必要があります。

70歳までの継続雇用制度と派遣

65歳までの継続雇用制度は、定年退職を迎えた企業もしくはそのグループ企業で継続雇用しなければなりませんでしたが、70歳までの継続雇用制度では他社で継続雇用することも認められています。もちろん、確実に継続雇用が実施されるように企業間で継続雇用対象者受け入れに関する契約を締結する必要がありますが、継続雇用された者を派遣社員とすることも認められています。例えば、企業で65歳を迎える者を他社である派遣会社が継続雇用し、65歳まで勤務していた企業に派遣することも可能です。

60歳以上定年退職者については、1年以内離職者の派遣禁止の例外として派遣可能であったことから、従来も行われていたところですが、法改正によりさらに安定して高齢者が働く環境を提供することが可能となると思われます。

ただし、70歳までの継続雇用を目的としていることから、いわゆる登録型派遣の形式は認められず、有期雇用であっても常用型派遣のように労働者派遣契約の有無にかかわらず雇用が確保される雇用形態で継続雇用しなければなりません。
ユアサイド中宮

解説者

社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員

社会保険労務士 中宮 伸二郎

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。

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