労働者派遣法の施行規則・指針の改正に伴い、労働者派遣法業務取扱要領の改正が行われました。施行規則・指針の改正時期に合わせて、2021年1月版と4月版が厚生労働省より公表されています。施行規則・指針の改正に関する詳細に加え、労働者派遣制度に関する議論の中間整理に基づく改正も行われました。今回は、見落としがちな業務取扱要領の改正点に関する解説です。
※この記事は 2021年1月29日時点の情報を元に解説しています。
目次
キャリアアップ措置説明は、努力義務から説明義務へ
2021年1月より、雇用しようとするとき(募集・採用時)の説明事項にキャリアアップ措置が追加されましたが、具体的な説明事項として、以下のように示されました。
キャリアアップ措置 | 説明事項 | 望ましいこと(努力義務) |
---|---|---|
教育訓練 | 訓練内容・受講方法 | キャリアパスに応じた受講モデルケースの説明 |
キャリアコンサルティング | 相談先・利用方法 | キャリアコンサルティングの相談事例 |
教育訓練
教育訓練については、許可申請(更新)の際に作成した教育計画を示すことや、年次ごとの受講モデルを示して説明するとともに受講方法も説明しなければなりません。受講方法は、派遣会社ごとに様々な方法がとられていますが、年に数回の集合研修を実施している場合、「毎年、〇月、〇月に研修を実施します。対象者には別途実施案内を送ります」等の説明をし、Eラーニングの場合、ログインIDの配布方法などを説明します。なお、雇入れ後に教育訓練計画が変更された際も、都度説明しなければなりません。
キャリアコンサルティング
キャリアコンサルティングは、窓口の連絡先を伝えることに加え、キャリアコンサルティングで何を相談すればよいか分からないことも予想されることから、相談事例を案内することが望ましいとされています。
“労働契約申込み みなし制度”を説明する
派遣労働者として雇用しようとするときの説明の項目の一つに労働者派遣制度の概要が含まれていますが、その内容についてより詳しい説明が加えられました。
「派遣労働者の保護に関する規定については十分な説明が求められ、この説明には労働契約申込み みなし制度の内容が含まれることが必要である」 厚生労働省が作成する「派遣で働くときに特に知っておきたいこと(制度の概要)」を配布して説明している場合は、労働契約申込み みなし制度について記載されているので問題ありませんが、オリジナルの資料を用いている場合は、追記が必要となります。
日雇派遣の例外要件確認は、まず書類から
4種類の例外に該当する場合、政令で定める業務以外の業務でも日雇い派遣が可能とされていますが、例外に該当するかどうかの確認を派遣会社に義務付けています。学生証や所得証明書、源泉徴収票を確認しなければなりませんが、合理的な理由によりこれらの書類等が用意できない場合、またはこれらの書類等のみでは判断できない場合(昼間学生に該当するか否か等)には、やむを得ない措置として日雇労働者本人からの申告(誓約書の提出)によることとしても差し支えないとされています。
今回の改正では、労働者派遣制度に関する議論の中間整理に基づき、以下の一文が加えられました。
「要件の確認時に、本人に公的書類等の提出・提示を求めず、合理的な理由がないにも関わらず、誓約書の提出で代替するように誘導することは不適切であること。」誓約書を書かせれば、日雇派遣OKという安易な運用はできません。
日雇派遣の例外
・60歳以上
・昼間学生
・生業収入500万円以上
・世帯収入500万円以上
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。