
派遣会社の皆さまへ
前回よりコラム記事執筆を担当しております、
厚生労働省指定派遣元責任者講習講師、
法務と実務に強い派遣特化型の社会保険労務士、みなとみらい人事コンサルティング代表の泉文美(いずみ あやみ)と申します。
6月は、時期的に旬な派遣報告書について解説しましたが、
今回のテーマは、それに続いて派遣報告書提出後の気を付けたいポイントについて解説します。

「派遣報告書って、提出したらそれで終わりじゃないの?」と思ったアナタ、そんなことはありませんよ~!
※この記事は 2025年6月23日時点の情報を元に解説しています。
目次
労働局からの問い合わせに対応する
来庁しての提出なら、何かあればその場で指摘があります。
郵送や電子で提出した場合は、後日、労働局から問い合わせが来る可能性があります。
報告書について労働局から問い合わせがあるのは、たいてい次のようなケースです。
たとえば、記入漏れがある場合や、記載されている数値に食い違いがある場合。あるいは前回もお伝えした「労使協定のコピー」などの添付書類が抜けている場合などです。
こうした連絡が来たときには、できるだけ早く対応するようにしましょう。
必要な回答をしないと、いつまでたっても労働局の報告書処理が終わらないことになります。
連絡手段は主に電話ですが、
労働局によってはメール(特に電子で提出した場合が多い)や、
郵便(特に会社電話が全然つながらないとき)で問い合わせが来ることがあります。
スムーズに受け答えできるよう、あらかじめ社内での担当窓口を決めておくとよいでしょう。

私の顧問先でもよくあるのですが、
派遣報告書を作った人と、役所からの問い合わせに対応する人が別になっていることがあります。
その場合は情報共有が必須です。
特に電話対応については注意が必要です。
すぐに出られないこともあると思いますが、その場合でも留守番電話の設定などはしておきましょう。
というのも、労働局の担当者が何度も電話しているのに、いつもコール音だけで誰も出ない、という状態が続くと、「本当に事務所があるのか?」と疑われてしまうことがあります。
ひどい場合には、派遣許可自体を疑われてしまうおそれもあるので、連絡が取れる体制を整えておくことが大切です。
報告書の控えを保管する
無事に労働局の処理が済み、控えが戻ってきたらどうしていますか?
まさか、すぐシュレッダーにかけている、なんていう人はいませんよね?
派遣報告書は3年間の保管義務があります。
ここで「いつから3年って数えるの?」という、
正確なところとなると結構悩ましい疑問がありますが
実務上の立場からのお勧めは、「どんな書類でも、その書類に書かれている最も遅い日付から」としておくと、うっかり期限到来前に捨ててしまうということが防げて安心です。
例えば、派遣報告書を保管しておく期間については「第1面の右上にある提出日」ではなく、「右下に押されている労働局の受付印の日付(※郵送で提出した場合)」を起点にして、そこから3年間としてみましょう。
受付印の日付から数えるのがいちばん確実で、余裕を持った対応になります。
来庁あるいは郵送提出の場合は、紙で控えが戻ります。
報告書は原本を保管するのが原則です。
たとえコピーを取ったとしても、保管期限が過ぎるまでは原本を捨ててしまわないよう、くれぐれも注意してください。
電子申請の場合でも「役所の処理完了日」といったものが必ず記載されています。
その日を基準にして、そこから3年間保管するようにしておくと良いでしょう。
マイナンバーとは違って、派遣報告書は保管の法定期限を過ぎても、そのまま保管していて問題ありません。
ですので「心配だから、ひとまず全部残しておく」という対応も、実務上はアリです。
報告書はそれほど場所を取るものでもありませんしね。
ただし、過去分を処分する場合は、法定期限を過ぎたものだけを選んで捨てるように注意しましょう。
たとえば「今年の控えが戻ってきたから」といって、すぐに昨年分をまとめて捨ててしまう――そんなことがないよう、気をつけてください。
保管場所も意外と重要
電子の場合はデータで適切なパソコンなどに保存するとして、
郵送や来庁提出で、控え原紙がある場合は、期限までどこに保管したらいいでしょうか?
実は、派遣会社は許可を受けるときに、事務所の審査もされています。
皆さんの会社も、許可申請の時に見本のような、
その際、必ず「派遣の個人情報の棚(施錠できるもの)」を設置し、
レイアウト図に記載しなければならないと定められているのです。
ですから、その派遣の個人情報の棚に保管をするのが、最もよいでしょう。
許可申請時にはレイアウト図にきちんと記載していても、
その後に書類が増えるにつれて、他の種類の書類が混ざってしまったり、派遣用の棚自体が別の場所に移されていたりすることがあります。
こうしたことが起きないよう、この機会に書類の保管場所について整理しておくのもよいかもしれませんね。
また、今後のコラムでも追々お話していきますが、派遣会社は定期的に労働局の臨検調査を受けることがあります。
私の顧問先でも、適切な場所に法定の派遣関係書類を保管しているかチェックされたことがあります。
書類が散逸しないよう、日々の整理整頓も改めて確認しておくことをお勧めします。
さいごに
当事務所では派遣報告書の提出後に関する相談もいつでも受け付けています。
何かありましたら、まずは下記、当事務所HPのお問い合わせフォームから質問してくださいね。初回相談は無料です。

解説者
みなとみらい人事コンサルティング 代表
泉 文美(いずみ あやみ)
横浜生まれ。2005年東京大学卒業。
ハローワーク、労働基準監督署、労働局、厚生労働省勤務経験有。
2012年社会保険労務士事務所開業。
開業当初より厚生労働省指定「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」講師を務める。派遣・紹介関係の顧問先多数。講演・著述の依頼もこなす。
法務と実務両面に強い、派遣・紹介特化型社労士として、役所での勤務経験も活かし、「役所対応に強い社労士」として定評がある。