
こんにちは、社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
派遣社員の直接雇用に関して派遣法では、義務と努力義務が4種類規定されています。
今回は、派遣先が直接雇用の義務を負ったり、違法派遣と認定される場合について解説します。


※この記事は 2025年4月2日時点の情報を元に解説しています。
目次
直接雇用に関する制度4種
直接雇用とは、企業と従業員との間に派遣会社などが入らない雇用形態です。
派遣先が保険法に基づいて、派遣社員を直接雇用する制度は以下の4種類です。
①雇用安定措置に応じた優先雇用努力義務
次の条件をすべて満たす場合、派遣先は受け入れている派遣社員を遅滞なく雇い入れるよう努力しなければなりません。契約社員など正社員以外の雇用形態で雇用することも可能です。
・同一組織単位で1年以上勤務している派遣社員がいること。
・派遣先は、現在の派遣契約終了後、その業務のために誰かを直接雇用しようと考えていること。
・派遣先が、派遣元から雇用安定措置として直接雇用依頼を受けたこと。
引用: 雇用安定措置への対応
雇用安定措置(派遣労働者の派遣終了後の雇用を継続させるための措置※ )として、派遣元から、同一の業務に1年以上継続して従事する派遣労働者の直接雇用の依頼を受けた場合であって、その派遣終了後に引き続き同一の業務に従事させるために労働者を雇用する場合には、受け入れていた派遣労働者を雇用するよう努めなければなりません。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000196406.pdf
また、このような場合以外でも、雇用安定措置として直接雇用の依頼を受けた場合には、派遣労働者の能力評価を踏まえ、直接雇用に向けて真摯な検討を行うなど、本人の希望に沿った適切な対応をお願いします。
厚生労働省 派遣先の皆様へ 雇用安定措置への対応
(参照 2025-4-3)
②雇用安定措置に応じた募集情報提供義務

次の条件をすべて満たす場合、派遣先は受け入れている派遣社員に対し、派遣先事業所における募集情報を提供する義務があります。正社員だけではなくパートタイマーや契約社員等を含めた派遣先事業所全体での募集情報が対象となります。
ただし、特殊な資格を必要とするなど有期雇用派遣労働者が募集条件に該当しないことが明らかな場合は、周知の義務は生じません。
・抵触日に達する見込みの派遣社員がいること。
・派遣先は、派遣元から雇用安定措置として直接雇用依頼を受けたこと。
③正社員募集時の募集情報提供義務
次の条件を満たす場合、
派遣先は受け入れている派遣社員に対し、派遣先事業所における正社員募集情報を提供しなければなりません。
・同一派遣先事業所において、1年以上継続して就労している派遣労働者(※)
※ 有期雇用派遣労働者に限らず、無期雇用派遣労働者も含まれます。
同一の事業所等において1年以上の継続勤務があれば対象となり、途中で同一事業所内の組織単位を異動した場合も含まれます。
④労働契約申込みみなし制度
労働契約申込みみなし制度とは、
派遣先等により違法派遣が行われた時点で、派遣先等が派遣労働者に対して、その派遣労働者の雇用主(派遣元等)との労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだとみなす制度です。
・禁止業務(港湾・建設・警備など)で派遣を受け入れること
・無許可派遣事業者から派遣を受け入れること
・期間制限に違反して派遣を受け入れること
・偽装請負
直接雇用と職業紹介
派遣法で規定する上記①から④により、派遣先が直接雇用をすることは、有料職業紹介に該当しません。
平成27年派遣法改正Q&Aにおいて、雇用安定措置の直接雇用依頼は、職業紹介に該当しないとされています。また、②③の募集情報提供により、派遣社員が自らの意思で直接応募したのであれば、「職業紹介」は行われていません。
そのため、派遣先・派遣社員の合意を得ずに有料職業紹介として取り扱うことはできません。

解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。