雇用保険マルチジョブホルダー制度

こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。

複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、ある要件を満たす場合、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度が2022年1月1日から始まります。今回は、雇用保険マルチジョブホルダー制度を詳しく解説します。

※この記事は 2021年12月1日時点の情報を元に解説しています。

2つの事業所での勤務を合計して20時間以上になれば雇用保険に加入OK

原則的に雇用保険は、主たる事業所での労働条件が週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たす場合に適用されます。そのため、従来であれば、 かけもちで 勤務先A:週所定15時間 勤務先B : 週所定15時間 で働いていて、その合計が20時間を超える場合であっても雇用保険に入ることはできませんでした。

しかし、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、2つ以上の雇用保険適用事業に雇用される65歳以上の者について、以下の要件を満たす場合、被保険者となることができます。

① 2つの事業所におけるそれぞれの1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満
② 1週間の所定労働時間の合計が20時間以上
③ 31日以上の雇用見込みあり

マルチ高年齢被保険者の該当・非該当例

勤務先A 勤務先B雇用保険の加入
週所定労働時間 15時間15時間合計20時間以上のため、特例で加入可能
週所定労働時間 8時間8時間合計20時間未満のため、加入不可
週所定労働時間 24時間10時間勤務先Aの勤務が週20時間以上のため、Aで加入(合算できない)

マルチ高年齢被保険者の資格<取得>手続

通常の雇用保険と異なり、マルチ高年齢被保険者の手続は、65歳以上の労働者が希望した場合に行います。手続きは、本人の住所を管轄するハローワークで本人が行わなければなりません。また、資格取得日はハローワークへ届出た日となり、遡って資格を取得することはできません。

マルチ高年齢被保険者の資格<喪失>手続

マルチ高齢被保険者の資格喪失理由は、退職だけではなく、以下の場合に手続きが必要となります。取得時と同様に被保険者本人が手続を行うとされています。

①自社を退職したとき
②他社を退職したとき(自社の雇用は継続)
⇒雇用を継続している会社(自社)でも受給資格確認のために離職証明書を発行しなければなりません。しかし、退職はしていないので、離職理由や賃金額を記入する必要はありません。
③自社の所定労働時間が週5時間未満に変更されたとき
④自社の週所定労働時間が20時間以上に変更されたとき(同時に通常の資格取得も必要)
⑤他社の週所定労働時間が週5時間未満または週20時間以上に変更されたとき

マルチ高齢被保険者を希望する方は少ないかもしれませんが、こういった制度があることを理解しておくと良いでしょう。


ユアサイド中宮

解説者

社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員

社会保険労務士 中宮 伸二郎

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。

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