
派遣会社の皆様へ
厚生労働省指定派遣元責任者講習講師、法務と実務に強い派遣特化型の
社会保険労務士、みなとみらい人事コンサルティング代表の泉文美(いずみ あやみ)と申します。
今回もよろしくお願いいたします。
今回は「公正採用選考人権啓発推進員選任報告書」について解説します。
すべての派遣会社が提出しなければならないことになっているにも関わらず、あまり聞き慣れない書類かもしれません。
しかし、派遣の労働局調査で確認されることがあったり、過去には派遣許可・更新申請時に、きちんと提出しているか確認されたこともある重要な書類です。
これを機にしっかり理解して、適切に提出できるようにしておきましょう。
労働局の調査や、派遣許可(更新)申請については、今後のコラムで説明していきますよ~!
※この記事は 2026年6月22日時点の情報を元に解説しています。
目次
ポイント1「公正採用選考人権啓発推進員」とは?
まず、「公正採用選考人権啓発推進員」とは何でしょうか。
大変長い名前ですね。この記事で初めて知った、という人も実は多いのではないでしょうか?
これは読んで字のごとく、会社が人を採用する際、「公正」に「採用選考」が行われるよう「人権」に関する意識を「啓発」し、「推進」するために、会社が設置するべき委「員」のことです。
例えば、性別、国籍、人種、本籍地等で偏った採用選考をすることは「公正」ではなく、「人権」に配慮していないと言えます。
そのようなことが起こらないよう、派遣会社は「公正採用選考人権啓発推進員」を置き、「推進員」は「採用選考」が「人権」に配慮した「公正」なものであるように社内の関係者に「啓発」しなければなりません。
そして、派遣会社は規模や派遣の実績に関わらず、事業所ごとに必ずこの「公正採用選考人権啓発推進員」を選任し、事業所を管轄するハローワークへ報告しなければなりません。
つまり、本社と支店でそれぞれ派遣許可を受けている場合は、すべての事業所で推進員を選任し、それぞれ管轄のハローワークへ報告書を提出する、という流れになります。
ポイント2「公正採用選考人権啓発推進員」には誰がなるべきか?
この推進員は「採用選考」に関わる役割ですから、派遣労働者の採用選考に責任のある人がなるといいでしょう。派遣元責任者でももちろん構いません。
ただし、会社によっては、
「派遣元責任者は派遣労働者の雇用管理は担当しているが、採用選考は別部署が担当している」
というケースもあると思います。
そのような場合は、実際に採用選考を担当している部署の責任者がふさわしいでしょう。
選任する人数は、事業所ごとに1人で足ります。
ただし、事業所全体の公正採用に責任を持つ立場ですので、単なる担当者レベルではなく、部署の長など、一定の責任ある立場の方が任命されるべきです。
もちろん、役員が担当しても問題ありません。
ポイント3「公正採用選考人権啓発推進員」が身に着けておくべき、社内に啓蒙すべき知識とは?
「公正採用選考人権啓発推進員」に求められる知識は、これも読んで字のごとく「公正」な「採用選考」が行われるための「人権」に関するものです。
厚生労働省が「公正採用選考特設サイト」を作成していますので、このHPに掲載されている資料等を活用しましょう。
推進員は「啓発推進員」ですから、自身が理解するだけでなく、社内にこの人権についての意識を広める必要があります。
採用選考担当に関わる社内の人だけでなく、人事評価に関する人、派遣先で自社の派遣労働者が人権侵害行為を受けないよう、派遣先との交渉担当者やもちろん、派遣元責任者にもこのHPを活用して学習してもらいましょう。
ポイント4「公正採用選考人権啓発推進員選任報告書」を即提出しないといけない場合は?
本来であれば、皆さんの会社が派遣事業許可を経たときに、初回の選任報告を管轄のハローワークに提出しているはずです。
控えが残っていれば、まずはそれを確認しましょう。
控えが残っていないが、過去に提出したことは間違いない、という会社さんは
→ ハローワークに確認して控えを再発行してもらいましょう。
控えが残っていないし、提出したかどうかも不明、という会社さんは
→ 重複していたとしても受け付けてもらえます。今回の記事を契機に、改めて委員を選任・提出しましょう。
過去に提出した覚えは一切ない、という会社さんは言うまでもありませんね!
→ 即刻、委員を選任し、提出しなければなりません。
ここからは控えが残っていた、あるいは控えを再発行してもらえて中身を確認できる会社さんの場合です。東京都とそれ以外の会社さんで対応が違うので、注意しましょう。
1. 控えに記載されている推進員の氏名・役職が現在も変わっていない場合
書かれている推進員の氏名役職は今でも変わっていない
⇒東京都以外の会社さんはそのまま、何も提出する必要はありません。
その控えを大切に保管してください。
保管場所は、派遣の個人情報関係の書類を保管している棚などがよいでしょう。
派遣の個人情報の棚については、昨年7月公開のコラム「派遣報告書提出後の気をつけたいポイント」でも説明していますので、参照してください。
ただし、派遣報告書の控えは保存期限がありますが、この「推進員選任報告書」にはこの推進員が存在する限り有効な書類ですから保存期限はありません。
人事異動や推進員になっている人が退職するなどして委員が変更になった場合に「推進員変更報告書」を提出します。
その場合は次の「ポイント5」を読んでくださいね。
そうすると変更前の「推進員選任報告書」が過去のものになり、つまり新しい推進員が選任された日から保存期限が発生します。3年間、保存しておかなければなりません。
2. 控えに記載されている推進員が現在はいない、または役職・氏名が変わっている場合
控えに書かれている推進員はもういない、あるいは役職や氏名が変わっている
⇒この場合は新しい推進員を選任するか、同じ人であるならばその人の現在の役職氏名に書き換えて「推進員変更報告書」を提出しましょう。
次の「ポイント5」に進み、「提出したかどうか不明、または確実に提出したことが無い会社さん」と同じ手続きになります。
東京都の会社さんは、控えの有無や、控えの記載と現在の推進員の状況に関わらず、「ポイント6」に進んでください。
ポイント5「公正採用選考人権啓発推進員選任報告書」の作成、提出~東京都以外の場合~
必要な場合は、こちらの報告書を作成します。
ここで注意したいのが、「公正採用選考人権啓発推進員選任報告書」は、都道府県ごとに様式が異なるという点です。
この記事では神奈川県版を例にしていますが、実際に作成するときは、
「公正採用選考人権啓発推進員選任報告書」+事業所の都道府県名
で検索し、該当する様式を入手しましょう。
事業所ごとに提出するので、派遣事業所が複数ある会社さんの場合は、それぞれの事業所ごとの都道府県の用紙を入手して作成することになります。
選任報告
過去に提出したかどうかも不明、あるいは確実に出していない会社は「新規」として「選任報告」を作成します。
例に挙げた神奈川版でしたら「選任」とある方に〇をつけ、選任日を記載します。
選任日は推進員に任命された日を会社が決めて記載します。
他県の様式はまた書き方も書くべき情報も違いますので用紙を入手し、記載方法が不明の場合は管轄するハローワークに確認しましょう。
変更報告
一方、過去に提出した報告書に記載した推進員情報に変更があった場合は「変更報告」を作成します。
例に挙げた神奈川版でしたら「変更」とある方に〇をつけ、変更日を記載します。
変更日は推進員が変更された日を会社が決めて記載します。
変更の場合も、他県の様式はまた書き方も書くべき情報も違いますので用紙を入手し、記載方法が不明の場合は管轄するハローワークに確認しましょう。
報告書を作成したらハローワークに提出しましょう。
ハローワークのホームページを見ても、「公正採用選考人権啓発推進員選任報告書」の担当窓口が明記されていないことが多いです。
その場合は、総合窓口案内でこの報告書の名称を伝え、担当者につないでもらいましょう。
提出方法は窓口持参、郵送、あるいはメールでも受け付けている場合があります。
これはハローワークごとに対応が違うので確認してください。
窓口持参と郵送の場合はハローワーク提出用と会社控え用と2部準備しましょう。
郵送の場合は返信用封筒も同封しますが、送信用返信用封筒ともに、簡易書留などの特殊郵便を指定されることがあるので、ハローワークに確認して指示された通りに用意しましょう。
控えが戻ってきたら前述したとおり、推進員に変更がない限り、派遣の個人情報関係の書類と一緒に保管しておきましょう。
東京都以外の事業所についてはこれで終了です!
ポイント6「公正採用選考人権啓発推進員選任報告書」の作成・提出~東京都の場合~
東京都の会社さんは他県とはやり方が違うので、このポイント6を読んでください。
東京都版の様式には、神奈川県版など他県の様式とは異なり、「6月1日現在」という項目が追加されています。
他県は選任したとき、変更があったときだけ提出すればいいのに対して、東京都の事業所は変更があろうとなかろうと毎年6月1日の報告として提出しなければならないのです!
そのため、過去の控えがあるかどうかにかかわらず、たとえばこのコラム執筆年であれば、2026年6月1日現在の報告として作成し、管轄のハローワークへ提出してください。
提出期限は派遣事業報告書のように6月30日と明確に決められているわけではありません。
ただし、6月1日現在の報告ですので、6月中、遅くとも翌月7月中までには提出したいところです。
逆に6月1日現在の報告ですから、5月より前に報告したらおかしいことになりますね!
早すぎる提出にも注意しましょう。
過去の控えが残っていて、今年の推進員も変更がない場合
控えを見ながら作成します。
「6月1日現在」の欄にチェックを入れ、推進員情報と選任日を記載しましょう。
過去の控えと現在の推進員情報が変わっている場合
「変更」と「6月1日現在」の両方にチェックを入れ、変更後の推進員情報と変更日を記載します。
過去の控えがなく、提出したかどうか不明な場合や、提出したことがない場合
「新規」と「6月1日現在」の両方にチェックを入れ、新しい推進員情報と選任日を記載します。
「公正採用選考人権啓発推進員選任報告書」の提出方法
提出方法はポイント5と同じで、ハローワークごとに確認しましょう。
同じ都内でもハローワークによって案内が異なることがあります。
控えが戻ったら派遣の個人情報の棚に、ハローワークの受付印の日付から3年間保管しましょう!
東京都では毎年提出することになりますので、派遣事業報告書の控えと同じように管理すると分かりやすいですね。
以後、東京都の事業所は毎年6月1日報告を出し続けることになります。
ただし、現在の推進員が退職したり、人事異動などで変更になった場合、翌年の6月1日を待たず、変更が行われた日からなるべく早く変更報告を提出しましょう。
これで東京都の会社さんも終了です!
お疲れさまでした!これから毎年6月になったら、またこのコラムを参照してお役立てくださいね!
次回からはまた別の派遣関係の書類について解説していきますよ~! お楽しみに!
さいごに
当事務所では公正採用選考人権啓発推進員選任報告書に関する相談もいつでも受け付けています。
何かありましたら、まずは下記、当事務所HPのお問い合わせフォームから質問してくださいね。初回相談は無料です。

解説者
みなとみらい人事コンサルティング 代表
泉 文美(いずみ あやみ)
横浜生まれ。2005年東京大学卒業。
ハローワーク、労働基準監督署、労働局、厚生労働省勤務経験有。
2012年社会保険労務士事務所開業。
開業当初より厚生労働省指定「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」講師を務める。派遣・紹介関係の顧問先多数。講演・著述の依頼もこなす。
法務と実務両面に強い、派遣・紹介特化型社労士として、役所での勤務経験も活かし、「役所対応に強い社労士」として定評がある。

「派遣事業報告書」の作成解説⑥ -第9面-
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