こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
常時雇用する労働者数301人以上の企業に対し、2021年4月1日から正規雇用労働者の中途採用比率の公表が義務付けられます。この法改正は、労働者の主体的なキャリア形成による職業生活のさらなる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備を推進することが目的とされています。
この記事では、まず自社が義務化の対象かどうかを判断するための「常時雇用する労働者のカウント方法」を解説します。そして、対象企業であった場合の中途採用比率の計算方法も詳しく説明します。派遣会社が間違いやすいポイントにも注目。
※この記事は 2021年3月24日時点の情報を元に解説しています。
目次
【301人以上は義務】「常時雇用する労働者」のカウント方法
「常時雇用する労働者」が301人以上の場合は、公表義務対象の企業となるわけですが、「常時雇用する労働者」とはどんな労働者が当てはまるのでしょうか?答えは、以下のいずれかに該当する労働者です。
①期間の定めなく雇用されている者
②一定の期間を定めて雇用されている者であって以下のどちらかに該当する者
(1) 過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者
(2) 雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者
派遣会社A社の例を見てみましょう。
▼派遣会社A社の例
合計335人なので、中途採用比率の公表義務対象となります。ちなみに、「常時雇用する労働者」300人以下の企業が、応募者への情報提供の一環として自主的に公表することは差し支えございません。また、300人以下の企業は、既に中途採用に積極的で中途採用比率も高いことから公表義務はなく、近い将来の義務化も予定されておりません。
<間違えやすい箇所を解説>中途採用比率の計算方法
対象企業の場合は、中途採用比率を計算して公表する義務があります。では、どのように計算するのでしょうか。
正規雇用の中途採用数÷正規雇用の採用数×100=中途採用比率(小数点第1位四捨五入)
正規雇用とは?
いわゆる「正規型の労働者(正社員)」および「無期雇用フルタイム労働者」です。正社員の採用だけではなく、無期フルタイムの派遣社員も中途採用比率の計算では、正規雇用としてカウントされます。
正規雇用の採用数とは?
新卒採用を含めた正規雇用の採用数です。年度内に退職した場合でもカウントに含まれます。
正規雇用の中途採用とは?
「新たに雇用する」場合だけではなく、「無期フルタイムへの転換」も含まれます。個人単位抵触日の到来時に無期転換する場合など、有期派遣社員が無期フルタイム派遣社員に転換した場合、中途採用としてカウントします。
計算例
例)新卒採用10人+中途採用5人+無期フルタイムへの転換15人=正規雇用採用数30人
20人÷30人×100=中途採用比率67%
<毎年計算が必要>公表方法とタイミング
中途採用比率は、直近の3年分(3事業年度)を毎年1回、公表することとされています。具体的には、公表日を明記した中途採用比率を、自社のホームページへ掲載したり、事業所(オフィス)に文書を掲示します。
例:労働施策総合推進法に基づく中途採用比率の公表(公表日2021年7月1日)
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | |
---|---|---|---|
中途採用比率 | 18% | 25% | 12% |
初回の公表は、2021年4月1日以降可能な限り速やかに行うこととされています。3月決算の派遣会社であれば、雇用安定措置による無期転換者数を6月の労働者派遣事業報告提出までに取りまとめなめればならないことから、これと近い時期に公表可能となるものと思われます。次年度以降は、前回公表から概ね1年以内に公表することとされています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。