
派遣会社の皆様へ
厚生労働省指定派遣元責任者講習講師、法務と実務に強い派遣特化型の
社会保険労務士、みなとみらい人事コンサルティング代表の泉文美(いずみ あやみ)と申します。
今回もよろしくお願いいたします。 今回も、すべての派遣会社が定期的に行わなければならない、派遣許可事業の更新手続きについて解説します。
※この記事は 2026年9月24日時点の情報を元に解説しています。
目次
ポイント1 派遣許可更新申請に必要な「資産要件」とは?
前回のコラムで、派遣許可更新申請期限と、いつの決算関係の書類を提出するかについてお伝えしました。
もう皆さんは、次回の派遣許可更新申請をいつまでに行い、どの期の決算書を添付することになるのか、確認できていますね。
前回のコラムで触れた通り、今回は、決算書の中身についてお話していきます。
派遣許可更新はただ申請書を作成し、定められた添付書類とともに提出すればいいのではありません。
許可更新にあたっては「資産要件」というものを必ずクリアしなければなりません。
万が一、この資産要件を満たしていなければ、申請書やその他の書類がどれだけきちんと整っていても、派遣許可を更新することはできません。
それでは具体的な「資産要件」を見ていきましょう。
まず必要になるのが、申請時点で提出できる最新の「貸借対照表」です。
ここで、「貸借対照表」のサンプルを見てください。
ご自身の会社の貸借対照表と見比べながら記事を読み進めるといいですね。
ここで掲載しているものはあくまでひな型ですので、会社によってレイアウトや項目名が異なる場合があります。
派遣許可更新の際にチェックされる項目は必ず記載されているはずですので確認してください。
ポイント2 資産要件その1~現預金額~
貸借対照表の中から「現預金」と書かれている項目を見つけましょう。
会社によってはこのひな形のように「現金」と「預金」が分かれていたり、「○○預金」「その他の預金」などと書かれて別になっていたりする場合もあります。
その場合は、現金・預金に関する額をすべて合計しましょう。

その金額が、
1,500万円 × 派遣事業所数 以上
になっている必要があります。
派遣許可を本社など1か所だけで取得している会社であれば、必要なのはそのまま1,500万円以上です。
本社とは別に支店などがあり、複数の事業所で派遣許可を取得している場合は、派遣事業所数を掛けて考えます。
この例だと現預金額が1,600万円ですから、1か所のみの派遣許可ならこれでクリアですね!
しかし、本社と支店の2か所で派遣事業を行っている場合は、
1,500万円 × 2事業所 = 3,000万円
が必要です。
現預金額が1,600万円では、この要件を満たすことができません。
ポイント3 資産要件その2~基準資産額~

続いて、貸借対照表の中から「純資産合計」と書かれている項目も見つけましょう。
さらに「繰延資産」「のれん権」と書かれている項目もあれば見つけましょう。
「繰延資産」「のれん権」は、そもそもない会社は「0円」という表記ではなく、貸借対照表に項目自体が載っていないことが多いので、ない場合は計算に入れなくていいです。
計算方法は、
純資産合計 - 繰延資産・のれん権 = 基準資産
です。
基準資産が2,000万円×派遣事業所数以上になっていることが必要です。
派遣許可を1か所だけで取得している会社であれば、必要な基準資産額は2,000万円以上です。
複数の事業所で派遣許可を取得している場合はその数をかけて考えます。
この例だと4,000万円ですから、1か所のみの派遣許可ならこれでクリアですね!
しかし、2か所で派遣事業を行っている会社であれば、
2,000万円 × 2事業所 = 4,000万円
が必要ですので、こちらも基準資産額だけを見ればクリアしています。
しかし、ここで思い出してください。
先ほどのポイント2では、現預金額が1,600万円でした。
2事業所の場合、現預金は3,000万円以上必要ですから、そちらの要件はクリアできていません。
つまり、基準資産額だけを満たしていればよいわけではないということです。
資産要件は、それぞれの項目について定められた条件をすべて満たす必要があります。
ポイント4 資産要件その3 基準資産が負債合計の7分の1以上

さらに、貸借対照表の中から「負債合計」と書かれている項目も確認しましょう。
ポイント3で計算した「基準資産」は、この負債合計の7分の1以上である必要があります。
たとえば、例の負債合計が5,000万円、基準資産が4,000万円だったとします。
負債合計5,000万円の7分の1を計算すると、
5,000万円 ÷ 7 ≒ 714万2,858円(円未満切り上げ) となります。
基準資産は4,000万円ありますので、この条件は十分にクリアしています。
ただし、ここで一つ注意してください。
「負債合計の7分の1以上であればいい」ということではありません。
ポイント3で説明したとおり、派遣事業所が1か所の場合は、基準資産そのものが2,000万円以上必要です。
今回の例では、負債合計の7分の1の額が、そもそも2,000万円未満でしたので、「基準資産2,000万円」をクリアしていればOKでした。
では、負債合計の7分の1の額が2,000万円を超えてしまう場合はどうなるでしょうか。
例えば、1か所のみで派遣許可を取得している会社の場合
- 繰延資産とのれん権はなし
- 2億純資産があり、負債合計が1億8,000万
なので、
2億―1億8,000万=基準資産2,000万。
しかし、要件をクリアしている、とはなりません。
この場合 1億8,000万÷7≒2571万4286円(円未満切り上げ)
つまり、2,000万ではなく、約2,600万必要になってしまうのです!
繰り返しになりますが、資産要件は1から3まで、全ての項目で定められた金額をそれぞれ満たしていなければなりません。一つでも満たしていないと許可更新ができませんので注意しましょう。
特に「現預金1,500万、基準資産2,000万」とだけ覚えてしまって、この負債合計要件を忘れてしまう会社さんがあるので特に注意してください。
ある程度の規模のある会社さんほど、資産も大きいですが、負債も大きくなる傾向があるので注意が必要です。
そのため、
- 現預金額
- 基準資産額
- 基準資産が負債合計の7分の1以上であること
この3つを、それぞれきちんと確認することが重要です。
資産要件は、1から3まですべて満たして初めてクリアとなります。
ポイント5 まとめ
自分の会社は次の更新に向けて、いつの決算書を提出しなければならないのか、
その決算の時期は必ず貸借対照表において、資産要件すべての項目をクリアしなければならないことを徹底しましょう!
ここからは前回のコラムでも書いたことの繰り返しになりますが、とてもとても大切なことなので、改めて書いておきますね。
読者の方ご自身が経営者で、会社の財務状況や資産要件についてすべて把握しているのであれば問題ありません。 しかし、派遣許可更新の申請を担当する人と、決算書を担当する人が別の場合は、必ず関係者全員で情報を共有しておきましょう。
それも決算書を取りまとめるだけの経理担当のみならず、会社の資産内容に決定権のあるところまで巻き込んでいかないと、大変なことになります。
会社さんによっては税理士・公認会計士等とも連携し、協力してもらいましょう。
私も派遣特化型社労士を14年やってまいりました。
数年以上お付き合いのある顧問先でしたら、前もって私が社労士として「御社は〇年〇月の決算ですよ~!」と情報提供し続け、きちんと決算書を整えてもらっているのでいいのです。
ところが、更新期限が迫ってから、
「派遣許可更新申請だけお願いしたい」と単発でご依頼をいただくこともあります。
その場合、私自身も申請時期の直前になって初めて決算書を確認することになります。
そして実際に、決算書を確認してみると資産要件を満たしておらず、派遣許可を更新できなかったというケースもあるのです。
皆さんの会社がそんなことになったら大変ですね。
そうすると、また新規に派遣許可を取得する手続きをしなければいけなくなってしまうことになるのです!
その場合、前回のコラムで書いた「更新申請期限に間に合わず、慌てて新規申請をする」という場合とは全然事の重大さが異なります。
たとえば、
- 派遣許可の有効期間満了:令和9年1月末
- 更新申請期限:令和8年10月末
- 会社の決算:3月末
という会社があったとします。
この会社が、更新に使用する令和8年3月末決算で資産要件を満たしていなかった場合、次に要件を満たせる可能性があるのは、令和9年3月末決算です。
そこで何とか資産要件を満たし、その後に決算書を作成して新規申請をすると、新規申請ができるのは令和9年6月頃。
さらに審査を経て新たな許可を取得できるのが令和9年9月頃となれば、9か月近く派遣許可がない空白期間となってしまいます。
もし、この空白期間に派遣を行ってしまったらどうなるでしょうか。
ここからは、前々回のコラムでも説明したとおりです。
いずれにしてもそのようなことにならないよう、自社の派遣許可更新期限と使用する時期の決算書をしっかり確認し、本当に早めに準備をしておきましょう~!
これまでの説明から、派遣許可更新の準備は、単に申請書を書き始めるところからではないことが分かりますね。 資産要件を満たすところから準備と考えれば、更新期限の数年前から動かなければならない場合もあります。
先ほどの例で、
「令和8年3月末決算で資産要件を満たさなければならない」と分かっていたとします。
令和8年3月になってから対策を考え始めても、会社の資産状況によっては、すでに間に合わないことがあります。
令和8年3月末決算の対象期間は、令和7年4月から令和8年3月までです。
そう考えると、その決算期が始まる前、つまり令和7年3月頃までには、資産要件をどのように満たすのか方針を固めておく必要があるということですね。
これは単なる事務手続きの準備ではありません。
会社の経営や財務に関わる立場の方も含めて、早い段階から準備を進めることが不可欠です。
お疲れさまでした!
派遣許可更新申請のための決算期が始まる前に、またこのコラムを参照して、自社の更新時期と資産要件を確認してみてくださいね。
次回も引き続き、派遣許可更新申請手続きについて解説していきますよ~! お楽しみに!
さいごに
当事務所では派遣許可更新申請に関する相談もいつでも受け付けています。
何かありましたら、まずは下記、当事務所HPのお問い合わせフォームから質問してくださいね。初回相談は無料です。

解説者
みなとみらい人事コンサルティング 代表
泉 文美(いずみ あやみ)
横浜生まれ。2005年東京大学卒業。
ハローワーク、労働基準監督署、労働局、厚生労働省勤務経験有。
2012年社会保険労務士事務所開業。
開業当初より厚生労働省指定「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」講師を務める。派遣・紹介関係の顧問先多数。講演・著述の依頼もこなす。
法務と実務両面に強い、派遣・紹介特化型社労士として、役所での勤務経験も活かし、「役所対応に強い社労士」として定評がある。










