
派遣会社の皆様へ。
厚生労働省指定 派遣元責任者講習講師、法務と実務に強い派遣特化型の社会保険労務士、みなとみらい人事コンサルティング代表の泉 文美(いずみ あやみ)と申します。
今回もよろしくお願いいたします。
すべての派遣会社が定期的に行わなければならない、派遣許可事業の更新手続きについて解説します。
※この記事は 2026年8月21日時点の情報を元に解説しています。
目次
ポイント1 更新申請時期と決算期の関係
前回のコラムで、派遣許可の有効期間満了日と、派遣許可更新申請期限についてお伝えしました。
もう皆さんはいつまでに次回の申請をしなければいけないか、分かっていますね。
「今回は申請書の中身について解説するんじゃないの? なぜ決算書の話が出てくるの?」
と思われる読者の方もいるかもしれませんね。
派遣許可の更新では、申請書と一緒に、様々な添付書類も提出しなければなりません。
その中でも特に重要なのが、決算関係の書類です。
具体的には、申請時点で提出できる最新の「貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書」が必要です。
ここで「申請時点で提出できる最新の」というところがとても重要で、
つまり、自分の会社はいつの決算書を使用しなければならないか、あらかじめ把握する必要があります。
改めて、自分の会社の派遣許可証を確認しましょう。
派遣許可証には、派遣許可の有効期間が記載されています。
例えば、「令和4年1月1日から令和8年12月31日」と書いてあったとします。
更新手続きの期限は、有効期間満了日の3カ月前まで、でしたね。
つまり、この例でいえば、令和8年12月31日の3カ月前ですから、令和8年9月30日になります。
続いて、自分の会社の決算月を確認しましょう。
例えば「うちの会社は役所の年度と同じ、3月末決算だ」という場合は、
令和8年9月30日時点で提出できるのは令和8年3月末で締めた決算書ですね。
会社の決算時期は自由に決められますので、
例えば「会社が9月末決算だ」という場合は、令和8年9月30日時点で提出できるのは?
令和8年9月末で締めた決算書はまだ出来上がっていませんから、令和7年9月30日で締めた決算書になります。
このように、会社の決算時期と更新時期の関係によっては、1年近くずれることがありますので注意しましょう。
上記の2例は時期的に提出できる決算書はただ一つに決まりますが、
では、7月末決算の会社ではどうでしょうか。
この場合、令和8年9月30日時点で提出できる決算書はどちらになるのでしょうか。
通常、決算を締めてから決算書を作成し納税申告まで2カ月半程度かかります。
よって、令和8年7月末で締めると、通常ですと令和8年10月半ばころまでかかることもあります。
令和8年9月末期限の更新に間に合わない、となれば
令和7年7月末締めの決算を使用します。
一方で、決算書の作成や申告手続きを早めに進め、9月の申請時点までに令和8年7月末決算の書類を準備できれば、こちらを提出できる場合もあります。
つまり、このような会社では、決算書を提出できるタイミングが2回あるということですね。
ポイント2 なぜ決算期が重要なのか
決算書はただコピーを提出すればいいのではなく、その内容が重要です。
ここで、「貸借対照表」のサンプルを見てください。
ご自身の会社の貸借対照表と見比べながら記事を読み進めるといいですね。
これはあくまでひな型なので、皆さんの会社の様式は違うレイアウトかもしれませんが、
派遣許可更新の際に確認される項目は、必ずどこかに記載されています。
まず、貸借対照表の中から「現預金」にあたる項目を見つけましょう。
会社によってはこのひな形のように「現金」と「預金」が分かれていたり、「○○預金」「その他の預金」などと書かれて別になっていたりする場合もあります。
さらに、
「負債総額」
「純資産合計」
にあたる項目も確認してください。
今チェックした項目の数字がそれぞれ、一定の条件をクリアしていないと、いくら期限内に申請書を提出しても、派遣許可更新ができないのです! これを「資産要件」と言います。
資産要件の詳細はこのひな形にも説明が書かれていますが、
少し複雑な内容になりますので、次回詳しく解説します。
なのでここでは、
「派遣許可更新申請に必要な時期の決算書は、必ず資産要件を満たしていなければならない」
とだけ理解してください。
毎年資産要件を満たさなくていいのです。
派遣許可更新の際に提出する決算書が、資産要件を満たしていればよいのです。
財務状況に十分な余裕のある会社であれば、
「特に意識しなくても、毎年資産要件をクリアできている」と全く問題ないかもしれません。
問題なのは資産要件を満たすのに頑張らなければいけない会社さんです。
繰り返しになりますが、更新の際に提出する時期の決算だけ、満たせばいいのです。
更新とは関係のない年に資産要件を満たしていたとしても、
初回は3年、その後は5年ごとにやってくる更新のタイミングで提出する決算書が要件を満たしていなければ意味がありません。
ここで、先ほどの「決算書を提出できるタイミングが2回ある」という7月末決算の会社の場合を考えてみましょう。
令和8年9月末が申請期限で、
- 令和7年7月末決算
- 令和8年7月末決算
のどちらかを提出できる可能性があるとします。
この場合、令和7年7月末決算で資産要件を満たしていれば、その決算書を提出できます。
一方、令和7年7月末決算では資産要件を満たしていなければ、令和8年7月末決算では要件を満たせるように準備し、決算書作成や申告を急いで、申請に間に合わせるという方法も考えられます。
つまり、条件がうまく重なれば、2回チャンスがあるわけです。
しかし、このように2回チャレンジできる会社は、申請時期と決算時期の関係が都合よくいった場合に限られます。
通常は、最初に紹介した2つの例のように、「3月末決算だ」「9月末決算だ」という会社さんと同様、ただ1年に決まってしまいます。
だからこそ、
「次回の更新では、いつの決算書を提出することになるのか」
を、早い段階で把握しておくことが大切なのです。
そして、その決算では必ず資産要件をクリアできるように準備しておかなければなりません。
読者の方ご自身が経営者で、資産要件のことも全部把握している、ということであれば問題ありません。
しかし、派遣許可更新申請書を作成する担当と、決算書関係の担当が別の場合は、必ず関係者全員に情報を共有して、適切な時期に適切な決算書を提出できるようにしてください。
それも決算書を取りまとめるだけの経理担当のみならず、会社の資産内容に決定権のあるところまで巻き込んでいかないと、大変なことになります。
会社さんによっては税理士・公認会計士等とも連携し、協力してもらいましょう。
私も派遣特化型社労士を14年やってまいりました。
顧問契約ではなく、期限が迫ってから「派遣許可更新申請だけやってください」と単発業務でご依頼を頂くこともあります。
数年以上お付き合いのある顧問先でしたら、前もって私が社労士として「御社は〇年〇月の決算ですよ~!」と情報提供し続け、きちんと決算書を整えていただくよう準備を進めています。
ところが、更新期限が迫ってから、「派遣許可更新申請だけお願いしたい」と単発でご依頼いただく場合は、申請直前になって初めて私が決算書を確認することもあります。
そして確認してみたところ、資産要件を満たしておらず、派遣許可を更新できなかったという例も実際あるのです!
皆さんの会社がそんなことになったら大変ですね。
更新ができなければ、改めて新規に派遣許可を取得する手続きをしなければなりません。
その場合、前回のコラムで書いた、単に提出期限に間に合わなかったので慌てて新規申請、という場合とは全然事の重大さが異なります。
たとえば、
- 派遣許可の有効期間満了:令和8年12月末
- 更新申請期限:令和8年9月末
- 会社の決算:3月末
という会社があったとします。
この会社が、令和8年3月末決算で資産要件を満たしていなかった場合、次に資産要件を満たせる可能性があるのは令和9年3月末決算です。
そこから決算書を作成し、新規申請を行うとなると、申請できるのは令和9年6月頃。
さらに審査を経て新しい許可を取得できるのが令和9年9月頃となれば、8か月近く派遣許可がない空白期間が発生する可能性があります。
もし、その空白期間に派遣を行ってしまったらどうなるでしょうか。
ここからは前回のコラムでも説明したとおりです。
無許可で派遣事業を行えば、無許可事業者が派遣を行ったという、「1年以下の懲役、100万円以下の罰金」という最も重い罰則が課せられる派遣法違反となります。
では、法違反にならないために8か月も派遣ができないとなったら…?
派遣会社としては致命的ですよね。
派遣事業としての会社の売り上げは0、派遣先に迷惑をかけ、
そして、働いている派遣労働者を8か月もの間どうするのか、という問題も発生します。
考えたくもない最悪のシナリオですよね。下手をすると会社の存続にも関わることになります。
そのようなことにならないためにも、自社の派遣許可更新期限と、その更新で使用する決算書の時期を早めに確認しておくことが非常に重要です。
これまでの説明から、資産要件を満たす、というところから準備と考えると、派遣許可更新期限の数年前から、動かなくてはなりませんね!
上記の例で、
「令和8年3月末決算で資産要件を満たさなければならない」となった場合、
令和8年3月になってから考え始めても、資産の状況によっては間に合わないことがあります。
令和8年3月末決算の対象期間は、令和7年4月から令和8年3月までです。
そう考えると、その決算期が始まる前、つまり令和7年3月頃までには、どのように資産要件を満たすのか方針を決めておく必要があるということですね。
これは単なる申請書類の準備ではありません。
会社の経営や財務に関わる立場の方も含めて準備を進めることが不可欠です。
お疲れさまでした!派遣許可更新申請のための決算期が始まる前に、またこのコラムを参照して、ぜひお役立てくださいね!
次回も引き続き、派遣許可更新申請手続きについて解説していきますよ~! お楽しみに!
さいごに
当事務所では派遣許可更新申請に関する相談もいつでも受け付けています。
何かありましたら、まずは下記、当事務所HPのお問い合わせフォームから質問してくださいね。初回相談は無料です。

解説者
みなとみらい人事コンサルティング 代表
泉 文美(いずみ あやみ)
横浜生まれ。2005年東京大学卒業。
ハローワーク、労働基準監督署、労働局、厚生労働省勤務経験有。
2012年社会保険労務士事務所開業。
開業当初より厚生労働省指定「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」講師を務める。派遣・紹介関係の顧問先多数。講演・著述の依頼もこなす。
法務と実務両面に強い、派遣・紹介特化型社労士として、役所での勤務経験も活かし、「役所対応に強い社労士」として定評がある。

派遣許可更新手続き~有効期間と申請期限を確認しよう~






