労働局に提出する「収支決算書」を作成

派遣会社の皆様へ

厚生労働省指定派遣元責任者講習講師、法務と実務に強い派遣特化型の
社会保険労務士、みなとみらい人事コンサルティング代表の泉文美(いずみ あやみ)と申します。
今回もよろしくお願いいたします。

今回は新テーマとして「収支決算書」について解説します。

※この記事は 2025年10月21日時点の情報を元に解説しています。

ポイント1 いつ提出する?

前回までで、派遣事業報告書の提出から、「マージン率等の情報提供」のインターネットでの情報公開まで、一連の流れを説明しました。
今回から新テーマとして、新たな報告書「収支決算書」について説明します。

派遣会社さんは派遣事業報告書とは別に毎年、「収支決算書」という報告書も作成し提出しなければなりません。

提出時期はいつ?

派遣事業報告書はすでに説明した通り、毎年6月1日から30日までに提出しましたが、「収支決算書」はいつ提出すればいいのでしょうか?

結論から言うと、これは 会社の決算期によって異なります
具体的には、「決算期末後3カ月以内」 に提出しなければなりません。

(例)

  • 3月末決算の会社:6月末までに提出(派遣事業報告書と同じ期限なので、一緒に提出可能)。
  • 9月末決算の会社:12月末までに提出。

このように、決算期は会社ごとに異なるため、提出期限もそれぞれ変わってきます。
ご自身の会社の「決算期」と「提出期限」をあらかじめ確認し、期限内に忘れず提出しましょう。

ポイント2 収支決算書の書き方

では、具体的にどう「収支決算書」を作成するのか説明します。

必要な書類

まず必要なのは、会社の決算関係書類である「貸借対照表」「損益計算書」です。

会社の決算を迎え、決算処理を行って「貸借対照表」「損益計算書」が出来上がるまでに時間がかかるので、決算期末から3カ月後と提出期限に猶予があるのですね。

提出を担当しない方は、経理・財務部門顧問税理士・会計士などの担当者と連携し、期限までに必要書類を入手するようにしましょう。

なお、損益計算書も報告書の一連として提出しますが、収支決算書作成については、使用するのは貸借対照表だけです。

記入の手順

収支決算書 1〜5 の項目

自社の「派遣許可証」に記載されている通りに記入します。
住所や階数の表記などは、

  • 「五丁目四番三号」か「5-4-3」か
  • 「5階」か「5F」か
  • 「五〇三号」か「503号室」か

といった細部まで派遣許可証と完全に一致させましょう。
少しでも違うと労働局で細かく直されます

収支決算書 6. 資産等の状況

続いて6資産等の状況」です。ここで貸借対照表を使います。

  • 「現金・預金」「土地・建物」の金額を転記します。
  • 貸借対照表の数値が「千円単位」の場合は、ゼロを加えて「円単位」に直すのを忘れないようにしましょう。
  • 会社によっては「現金」「預金」「土地」「建物」がそれぞれ別に書かれているものもありますので、必要な項目を拾って合計するようにしましょう。
  • 「土地・建物」が存在しない会社は「0」と記入します。
  • 「資産額(計)」に貸借対照表の「資産合計」を記入。
  • 「その他」=「資産額(計)」-(「現金・預金」+「土地・建物」)で計算。
  • 「負債額(計)」に貸借対照表の「負債合計」を記入。

これで「6」の欄が完成です。

収支決算書 7. 収支の状況

見本のように記入してもいいのですが、貸借対照表には直接対応する欄がありません。別途数値を集計する必要があります。
なかなか大変な作業です。ですが、業務を簡単にするためのとっておきの裏技があります。

「7」の欄を空欄にして、見本の赤いハイライト部分のように「別添貸借対照表・損益計算書の通りと記載するのです。
これなら一気に作業が軽減されます。

備考欄

最後の備考欄に労働局問い合わせ用として担当者名と電話番号を書きましょう。
これで収支決算書は完成です!

ポイント3 提出に必要な書類

収支決算書を提出するときは、以下の書類をまとめて一式にします。

  • 収支決算書
  • 貸借対照表(別添)
  • 損益計算書(別添)

これらで一連の報告書となります。

それぞれ、正・副・控として、計3部用意しましょう。
例えば見本のように1ページの書類であれば3ページ×3部=計9枚必要になります。会社によっては「貸借対照表」「損益計算書」が複数ページに渡ることもあるので、忘れずにすべてを提出しましょう。

郵送の場合は返信用封筒なども必要になります。それはまた次回にしましょう。
なぜならば、収支決算書だけを単独で提出することはほぼ無いからです。

同じ提出期限の「関係派遣先割合報告書」も一緒に作成して提出することがほとんどですので、
次回「関係派遣先割合報告書」を説明するときにまとめてお話ししましょう~!


解説者

みなとみらい人事コンサルティング 代表
泉 文美(いずみ あやみ)

横浜生まれ。2005年東京大学卒業。
ハローワーク、労働基準監督署、労働局、厚生労働省勤務経験有。
2012年社会保険労務士事務所開業。
開業当初より厚生労働省指定「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」講師を務める。派遣・紹介関係の顧問先多数。講演・著述の依頼もこなす。
法務と実務両面に強い、派遣・紹介特化型社労士として、役所での勤務経験も活かし、「役所対応に強い社労士」として定評がある。

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