
こんにちは、社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
派遣元は、労働時間に関する労使協定締結にあたり派遣先の勤務状況を踏まえて締結する必要があります。
今回は、労使協定の中で労働時間に関する事項について解説します。

派遣会社の労働時間に関する労使協定は、どうやって締結するのですか。

派遣業以外の企業であれば、事業所ごとに1種類の労使協定で足りることが多いのですが、派遣元は派遣先にあわせて数種類の協定を締結する必要があります。

※この記事は 2025年2月4日時点の情報を元に解説しています。
目次
労働時間に関する労使協定
労使協定の中で、労働時間に関するものは下表の6種類が該当します。
派遣社員の就業に必要であれば、派遣元でこれらの労使協定を締結しなければなりません。
労使協定名 | 有効期間 | 労働基準監督署等への届出 |
---|---|---|
時間外労働・休日労働に関する協定(36協定) | 必要 | 必要 |
1ヶ月単位の変形労働時間制に関する協定 | 必要 | 必要 |
1年単位の変形労働時間制に関する協定 | 必要 | 必要 |
フレックスタイム制に関する協定 | 不要 | 清算期間1ヶ月以内:不要 清算期間1ヶ月超:必要 |
事業場外労働に関する協定 ※みなし時間が法定労働時間を超える場合 | 必要 | 必要 |
専門業務型裁量労働制に関する協定 | 必要 | 必要 |
36協定
派遣元は、派遣先の業種・業務内容を踏まえて36協定を締結する必要があるとされています。特に36協定届の様式が異なる業種・業務内容には注意が必要です。
これらの業種・業務内容は、その他の事業と異なる時間外労働の上限が設けられているものもあります。上限の違いと労働基準監督署への届出様式の違いに注意が必要です。
様式が異なる業種・業務

建設事業
(CADオペレーターや施工管理者を建設会社に派遣する場合)
自動車運転者
(運送会社へのドライバー派遣に限らず、主たる業務が運転の場合)
新技術・新商品等の研究開発業務
(専門的、科学的な知識、技術を有する者が行う業務に限られ、補助業務は含まれません)
医師
(へき地、離島への派遣と紹介予定派遣以外派遣することはできません)
1か月単位の変形労働時間制
1か月単位の変形労働時間制は、就業規則に以下3項目が規定されている場合、労使協定は不要です。
①対象労働者の範囲
②対象期間および起算日
③労働日および労働日ごとの労働時間
派遣労働者の場合、派遣先ごとに①から③の内容が異なるため、あらかじめ就業規則に全てのパターンを記載することは不可能です。そのため、派遣先ごとに別途労使協定を締結・届出する必要があります。
1年単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制を適用する場合、労使協定の締結・届出が必要になります。
「1年単位の変形労働時間制の労使協定」も「1か月単位の変形労働時間制」と同様に上記の①から③を定めなければならないため、派遣先ごとに締結する必要があります。
さいごに
必要な労使協定を締結せずに派遣就業を行った場合、派遣先は法定労働時間の超過で労基法違反を問われる可能性があります。派遣元も未払い残業が生じる恐れがあります。
派遣先の就業条件にあわせた労使協定を必ず締結してください。

解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。