派遣社員の待遇を労使協定方式にした場合でも、労働者派遣契約を締結する都度、派遣先の情報提供を受けなければなりません。ただし、派遣社員を協定対象労働者に限定することを労働者派遣契約に定めている場合は、提供を受ける情報が以下の2項目に限定されます。
①教育訓練の内容
派遣社員と同種の業務に従事する派遣先社員に対して行われている、
業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の内容。
(当該教育訓練がない場合、その旨)
②食堂、休憩室、更衣室の内容
利用機会の付与の有無、利用時間等具体的な内容。
(当該施設がない場合、その旨)
①②ともに労使協定方式であっても派遣先との均等・均衡が求められる待遇です。
「①教育訓練」に関しては、
派遣社員が以前、同業他社に勤務し当該教育訓練と同様の教育訓練を受講している場合など、職務の遂行に必要な知識や技術を身に付けている場合を除き、派遣先は必要な能力を付与するための教育訓練を実施することが、求められています。例えば、派遣先が自社の社員に対し「新入社員研修」として基本的なマナー研修を実施している場合、それが必要な派遣社員に対しても、同等の研修を派遣先は実施しなければなりません。
しかし、キャリアアップのための教育訓練や入職時訓練を派遣元が既に実施している場合や、その派遣社員の職歴から既に身に着けている場合は、派遣先が実施する必要はありません。
「②食堂、休憩室、更衣室」に関しては、
派遣先が自社社員に対し利用の機会を与えている食堂、休憩室、更衣室がある場合は、派遣先は、派遣社員に対しても利用の機会を与えなければなりません。
食堂の利用については、派遣先社員と派遣社員の料金の差が生じていることがありますが、労使協定方式の場合、食堂を利用することができれば法違反とはなりません。
しかし、料金の差が大きいことにより派遣社員が食堂を実質的に利用できない状況となっている場合は、派遣先の義務違反となる可能性があります。また、派遣先均等・均衡方式の場合、食堂の料金についても均等・均衡の対象となることから派遣先社員同等の補助が必要になると思われます。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。