「マージン率等の情報提供」を作成しよう

派遣会社の皆様へ

厚生労働省指定派遣元責任者講習講師、
法務と実務に強い派遣特化型の社会保険労務士、みなとみらい人事コンサルティング代表の泉文美(いずみ あやみ)と申します。
今回も、よろしくお願いいたします。

前回(7月公開)は、時期的に旬な「派遣報告書提出後の、気を付けたいポイント」について解説しました。
今回のテーマはそれに続いて、派遣報告書の内容に基づいて作成する「マージン率等の情報提供」について解説します。

泉 文美

「派遣報告書の控えも戻って無事にしまったし、これで終わりじゃないの?」と思ったアナタ、まだまだ仕事は終わりませんよ~!

※この記事は 2025年7月22日時点の情報を元に解説しています。

ポイント1「マージン率」って?

そろそろ、派遣報告書の控えが無事労働局から戻ってきた頃かと思います。
派遣会社としてはこの控えの内容を確認しながら、次の作業「マージン率等の情報提供」の作成に取り掛かる必要があります。

泉 文美

前月のコラムを見て、派遣報告書を適切な場所に格納したという方。
その控えを手元に出して、以下の記事を読むと分かりやすくていいですよ~!

ここでまず「マージン率」とは何かから、ご説明しましょう。
実際に提出した自分の会社の派遣報告書の、第3面を見てください。
ここには、職種ごとの「派遣料金」と「派遣労働者の賃金」の平均額をそれぞれ記載しているはずです。

  • 派遣料金…派遣先から派遣会社が受け取る金額

  • 派遣労働者の賃金…派遣労働者に支払う給与

マージン率とは、派遣料金から派遣労働者の賃金を引いて、派遣料金で割った割合、
つまり、派遣料金に対して派遣会社が何%をもらっているか、を表したものです。

マージン率は、以下の式で算出します

(派遣料金 - 派遣労働者の賃金) ÷ 派遣料金 × 100(%)

例)派遣料金が 20,000円。労働者賃金が 16,000円の場合。
⇒ 差額4,000円が会社の取り分
⇒ 4,000円 ÷ 20,000円 = 20%(マージン率)

この式に基づいて、皆さんの会社のマージン率を算出しましょう。
例のように、切りのいい数字にならない場合は、
20.73%→20.7% のように、小数点第一位になるように四捨五入します。

ポイント2 情報提供はマージン率だけじゃない!

ポイント1でやったように、マージン率だけを出して、
自社のHPなどに記載して終わり、という派遣会社さんもよく見ます。
実はこれだけでは足りません。

派遣法に限ったことではないのですが、
法律などで「○○等」と書かれていたら、それは「○○と、ほかにもありますよ」という意味なのです!

ですから
「マージン率だけではなく、ほかの必要な項目も、全部情報提供してくださいね~」
という意味になりますから、注意しましょう。

では、マージン率以外には、具体的に何を記載すれば良いのでしょうか?

ここではわかりやすい説明もついているので、山梨労働局作成のものを掲示していますが、
皆さんの会社の都道府県労働局での様式が出ている場合は、それに従って作成するのが一番良いでしょう。

ここからは、様式例を見ながら解説していきます。
右上に「報告書をもとに作成」と書いてあります。

①から始まる各項目にも書いてあるように「いつの時点の、何に基づく情報か」を、それぞれ明示しなければなりません。

派遣報告書は毎年提出し、労働局によるチェックも受けています。
だからこそ、その報告書控えの数字を丸写しして情報提供資料を作るのが、もっとも確実で効率的な方法です。

もしも、任意の日付で新たに集計し直す場合、手間がかかるだけでなく
労働局のチェックを受けられない分、数値の信頼性も劣ってしまいます。
ここは簡単で間違いのない、記載例のように派遣報告書控えを使うのが安心です。

また、派遣会社さんによっては過去の情報(例:2020年時点)を何年も掲載し続けている会社も見受けられますが、これは要注意。
提供する情報は毎年最新版へ更新し続けなければなりません

ポイント3 情報提供までが派遣報告書一連の業務!

派遣報告書関連業務は、以下のような流れで進みます。

  1. 5月ごろまで派遣報告書記載に必要な情報を集計する
  2. 6月1日~30日派遣報告書を作成して労働局に提出する
  3. 提出後労働局から問い合わせが来たら対応する
  4. 控返却後控の内容をもとに「マージン率等の情報提供」を作成する

1~3までで終わるのではなく、4まで含めて一連の業務の流れだと押さえておくとよいでしょう。

次回は、「マージン率等の情報提供」の作成時に間違えやすいポイントをさらに詳しく解説します。どうぞお楽しみに!


解説者

みなとみらい人事コンサルティング 代表
泉 文美(いずみ あやみ)

横浜生まれ。2005年東京大学卒業。
ハローワーク、労働基準監督署、労働局、厚生労働省勤務経験有。
2012年社会保険労務士事務所開業。
開業当初より厚生労働省指定「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」講師を務める。派遣・紹介関係の顧問先多数。講演・著述の依頼もこなす。
法務と実務両面に強い、派遣・紹介特化型社労士として、役所での勤務経験も活かし、「役所対応に強い社労士」として定評がある。

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