【派遣会社必見】<コンサルタント山内氏が解説>コロナ禍において業績を伸ばす派遣会社は、何をやってる?
渡辺部長
こんにちは。私は、派遣会社の営業部長をやっている渡辺と申します。派遣業界向け経営支援のエキスパートである、コンサルタントの山内さんに色々教えてもらえるってことで、やって来ました!
山内氏
こんにちは。株式会社人材ビジネス経営研究所 代表の山内 栄人です!
私は、請負現場を複数立ち上げ⇒派遣の担当者⇒マネージャー⇒支店長を経験したのち、船井総合研究所に入り、派遣・請負のコンサルタントを8年勤め⇒その後独立。人材ビジネス業界に携わり20年。現在、約140社が参加する高付加価値型アウトソーシング研究会を主催しています。
渡辺部長
コロナ禍も、もう1年が過ぎましたが、
その中でも新しい取り組みを行っている会社もあると聞きました。
今回は、そのあたりについて教えてください!
山内氏
では、解説していきますね~!

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【現状】コロナの影響は、派遣先の業種によって違う

山内氏にオンラインで取材させていただきました
渡辺部長
派遣業界全般で見ると、
実際、コロナの影響ってどんな感じですか?

山内氏:
単純に、派遣先の仕事が減れば派遣元の仕事も減ってしまうわけですが、業種によって全然違うんですね。派遣業界全般で見ると、事務や経理といったオフィスワークは、在宅勤務での話もありましたが、すごく売上に寄与したかというと、そうも言えない。一方、製造業は、リーマンショックのときにガターンと落ちましたが、今回はそこまで落ちてないですね。壊滅的なのは、飲食、旅行、ホテル、イベントなどといったレジャー関連への派遣です。こういった業界は、軒並みダウンで、結果として避けて通れない状況になっているかと思います。

【解説】在宅派遣の広がりと他事業への進出

渡辺部長
コロナ禍を乗り切るために生み出された新たな事業は?

山内氏:
新しいスタイルとしては、家に居ながら派遣稼働できる「在宅派遣」がこの1年でかなり増えてきましたね。もちろん、コロナになる前からありましたが、急激に普及しました。その背景としては、昨年、世の中が急激にリモートワーク(在宅勤務)に向かう中、派遣社員だけがリモートワークできないということがあったんです。なぜなら、「派遣社員は派遣先でしか業務できないから~」という回答を労働局がしてしまうことがあった。それによって、社員さんはリモートワークできるのに、派遣社員だけがリモートワークできない、という差別的ともとれる問題が報道されて、厚労省もさすがにこれはマズイ!ということで「リモートワークできる場合は、派遣社員も取り入れてください」となり、大手事務派遣を中心に在宅派遣が一気に進みました。在宅派遣という、あまり今まで認識されていなかったスタイルが急激に増えたのがこの1年でしたね。

山内氏:
2020年の秋から2021年の春にかけて、創業以来の過去最高益を更新している派遣会社さんがいらっしゃいます。コロナ禍のこの状況において、「派遣先が調子良いと、派遣元も調子が良い」単純にそういう図式があって、良い単価&良い条件でのオーダーをたくさんいただいている。

例えば、製造業の大量オーダーがあったりします。一時は、在庫がなくなってストップとなっていたものが、2020年の秋口、揺り戻しのように仕事が戻ってきて、残業ができないから派遣で人を入れるということが起こっています。また、コロナ特需でいろいろなサービスが増え、それに伴うコールセンターを、平時なら海外に作るところを、間に合わないので日本でコールセンターを作りましょうとなり、大量オーダーが入ってきているところもあります。

このように大量オーダーをもらってるお客さんとは、創業以来から付き合っているわけではなく、ここ2、3年で獲得したお客さんだったりするんですね。お客さんは、時間をかけても取りに行くべきということが私の持論であります。

本来、年齢や性別に縛りがあってはいけないことですが、事実上、暗黙のオーダーが多数あります。コロナよりさらに前の2019年の9月までは、人手不足もあって「誰でもOK」という状況だったのが、その10月からの景気悪化に伴い、じわじわと縛りが厳しくなってきて、コロナになってそれがさらに加速した印象です。オーダーが爆発的に出ていないお客さんと取引していると年齢や条件の縛りが厳しく、なかなかマッチングがはまらないんですね。

ちなみに、請負・BPOなどいわゆる受託領域をやっている会社は、そんなに悪化していないし、場合によっては上がってきていますね。10年以上「請負!請負!」と言っている私からすると、やっていただいた会社には恩返しできたかと思いますけれども。

やはり、ポイントはコロナになって、ダブついてきた自社スタッフ・社員をうまく活用できるかどうかですね。全く派遣と違うものも多いんですが、新サービスを始められた会社というのは、それによる収益が上がって、結果論、利益が積み上げられている会社もあります。

例えば、派遣会社がオフィス、保育所、介護施設などへのウイルス除菌洗浄のサービスを新たに始めたという事例があります。これは、コロナで増えたニーズにいち早く対応した分かりやすい事例なんじゃないでしょうか。

なので、これまでやってきた資産としての「人材・立地・取引先」が絡まりあって、新サービスとなっているんで「これを始めればいいよ」と一概には言えないのですが、ひとつでも始めている会社は、業績が良いですね。そのあたりが分岐点なのかなと思います。

また実感として、メイン派遣先さんの仕事がなくなって、自社の派遣社員がダブついてきて、この状態をなんとかしようと、自社で派遣事業以外の仕事を始められた会社もこの1年で相当増えた印象ですね。

【戦略】持ち合わせたリソースと市場を見極めて、あたらしい取組みを

渡辺部長
新しいことを始めるにしても、どういう基準で検討したら
良いのでしょう?

山内氏:
前提として、「世の中のニーズの輪っか」と、「自社が出来そうなことの輪っか」、それの重なり合った部分が新しくチャレンジ出来る事業領域かと思います。でもそれだけでは、判断が難しくて、その事業領域にどんな競合がいてどれくらいの力をもっていて、競合と張り合った場合に勝てる見込みがあるか考えるわけです。

ズバリ言うと、1~2時間のミーティングで結論が出ることなんてほぼなくて、みんなでアイデアを出し合って繰り返し根気強く練っていくものなんですね。それで出した案に、オーナーだったり社長だったりが「うん」と言わないことだってある。「うん」と言ってもらうよう仕向けるには、やはり冷静に実情を踏まえた数字を出してロジカルな部分で納得させることです。

僕はよく、下りのエスカレーターに例えるのですが、普通のスピードで下りエスカレーターを歩いて上っているだけだと、いつのまにか後ろに流されてしまう。駆け足くらいで上らないと、後ろに流されてしまう。そういう危機感を全員が共通認識として持って、はじめて重い腰が上がるんじゃないかと思います。

ちなみに、私がコンサルティングに入って新しい事業を考えるときは、社長や幹部、社員含めてみんなでワクワクする、「これいけるんじゃない?」「これいったらすごいことになるよね?!」と、妄想がふくらむような側面も結構重要な要素だったりするんですよね。

【戦略】派遣一本はすごく危ない!

渡辺部長
業態軸で考えると、どんな業態を意識してやったら良いですか?

山内氏:
間違いなく言えることは、派遣一本はすごい危ない!ということですよ。だから、紹介予定派遣に一部軸足を置いておくのか、紹介をちゃんとできるよう整備しておくのか(紹介やれていない派遣会社多いと思うんです)、請負をやっていくのか、これはどれをやればいいという簡単なものではないと思うんですよね。それこそ、製造業なのか事務なのか、販売か技術職なのか、やっている業種・業態によってどれが一番望ましいものなのか変わってくると思います。

派遣以外の人材ビジネス領域。例えば、組み合わせですね。RPA+派遣ということであったり、教育を付加した上での派遣、事務領域のBPOだったり、採用領域のRPOだったり、いろいろな角度があるんで、自社でやれそうで、お客さんとの相性が良かったりするものをチャレンジしてみて欲しいし、チャレンジしてもらわないと今はOKでも数年後キツくなるんじゃないかなと思います。

渡辺部長
この先、派遣業界はどんな位置付けになるのでしょうか。

山内氏:
未来のことだから何とも言えない。ただ、あらゆる選択肢から考え抜いて、あえて派遣という働き方を選ぶ人は、ゼロじゃないが少ないと思います。やはり、なんとなく流れで派遣という人も多い。一方で、派遣というのは需給調整という側面で重要なセクションを担っていて、かつキャリアアップ・キャリアコンサルティングという道しるべや伴走者がいる唯一のサービスです。例えば、大学に行きたい人が予備校に行くように、本来望む働き方になるように予備校として派遣会社に入るという形なっていけば、ハローワークとも紹介会社とも違う、派遣会社の存在意義が相当、色濃く出てくるんじゃないかと思います。

渡辺部長
派遣会社としての役割を、社会にどれだけ提供できるかということですね。最初から自社雇用の流れも増えてきますか?
山内氏
大企業は、割高でも派遣を使うコストメリットはまだまだあるんで、派遣を使っていくと思ますね

山内氏:
ただ、中小企業の派遣先からすると、2020年4月の法改正がすごく重くて、「派遣ってお手軽で安いサービスだよね」から「お高い手間のかかるサービスだよね」という認識に変わってきているわけでして、派遣離れはすでに起こっています。
以前は、中小企業の派遣先にとって、自社雇用の正社員はハードルが高かった。ところが正社員という考え方も、同一労働同一賃金からはじまり、裁量労働制や解雇の金銭解決制度であったり、このあたりがどんどん変わってくると「別に正社員でも良いし、直接雇用の有期でもいいよね」となるわけです。

今の派遣というのは、タクシーみたいなもんで、家まで来てもらって目的地まで送ってもらえるが、毎回タクシーを使う人は少ないですよね。必要に応じて電車やバスと使い分けたりする。大企業は、全部タクシーという使い方もありえますが、一般的な財政の会社だったら自社雇用しようかという流れになりますね。

渡辺部長
なるほど。中小企業への派遣が難しくなると
より相手に寄り添った提案やサービスが必要になりそうですね。

山内氏:
オーダーがあれば、ただ派遣サービスを提供するだけの会社が多かったが、相手の会社が何を目的としているのか、根幹の課題やニーズを見定めてそれを解決できる提案ができるかどうかが、派遣会社の命運を分けていくところですね。もちろん、多くの中小の派遣会社は、体力から考えて何でもかんでもできるわけじゃないので、今、自社としてどのサービスに魂を込めるのか、注力していくのか、絞り込みが必要となってきます。そして、自社が提供するサービスで、ニーズを満たせるお客さんとお付き合いしていくのもポイントになってくるのかと思います。

まとめ

山内氏:
コロナになって1年が経過して、加速度的に派遣会社が二極化していってます。「ただ派遣をやっている会社」と「コロナの状況下で、世の中のニーズ見極めてしっかり社内で協議して、いろいろなことをやっている会社」です。

コロナが終わったら、戻るのかというとそういうわけではないです。この差は縮まるどころか、広まる一方です。20年30年やっていることが変わっていない、という会社さんは、一刻も早く社内ミーティングしてやることを見つめなおすということをお勧めします。派遣業界は無くなりませんので、この局面を乗り込えて生き残っていただければ、残存者の利益は相当だと思います。

じゃあ、今回はこれぐらいで終わろうかと思います。
ありがとうございました。

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人材ビジネス経営コンサルタント 山内 栄人 氏

株式会社人材ビジネス経営研究所 代表取締役
株式会社過去オール善 代表取締役
高付加価値型アウトソーシング研究会 主催
▽全国の派遣会社約140社が正会員として加盟
https://www.jinzai-biz.co.jp/studygroup/studygroup.html

請負現場を複数立ち上げ、派遣の担当者、マネージャー、支店長を経験したうえ船井総合研究所に入り、派遣・請負のコンサルタントを8年勤め、その後独立。派遣業界の地位向上、不本意型の派遣社員を一人でも減らすべく活動中。

現在はYouTubeチャンネルをエイジン名義で毎日更新。派遣の情報も豊富に発信中!
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