労働局に提出する「関係派遣先割合報告書」を作成

派遣会社の皆様へ

厚生労働省指定派遣元責任者講習講師、法務と実務に強い派遣特化型の
社会保険労務士、みなとみらい人事コンサルティング代表の泉文美(いずみ あやみ)と申します。
今回もよろしくお願いいたします。

今回は「関係派遣先割合報告書」について解説します。

※この記事は 2025年11月21日時点の情報を元に解説しています。

ポイント1 関係派遣先割合報告書とは?

前回は、「収支決算書」について説明しました。
今回は前回を受けて、また新たな報告書「関係派遣先割合報告書」について説明します。

派遣会社さんは「収支決算書」に加え、毎年「関係派遣先割合報告書」という報告書も作成し提出しなければなりません。

関係派遣先割合報告書とは

「関係派遣先派遣割合報告書」とは、派遣元事業主が、親会社や子会社など、関連のある企業(関係派遣先)に派遣している労働者の割合を厚生労働省に報告するための書類です。

提出期限はいつ?

提出期限は、前回取り上げた「収支決算書」とまったく同じです。
会社ごとに提出期限は異なりますが、

決算期末後 3カ月以内

となっています。

● 3月末決算の会社の場合

決算から3カ月後の 6月末まで が提出期限です。
この場合、

  • 派遣事業報告書

  • 収支決算書

  • 関係派遣先割合報告書

これら すべてを6月末までにまとめて提出 します。

● 3月決算以外の会社の場合

  • 「派遣事業報告書」は 毎年6月中に提出

  • 「収支決算書」「関係派遣先割合報告書」は 決算期末後3カ月以内に提出

会社によって決算期はさまざまです。
例えば、9月末決算であれば12月末まで が提出期限になります。

関係派遣先割合報告書の提出時期は、会社の決算期によって変わります。
まずは自社の決算期を確認し、提出期限をしっかり把握しておきましょう。

ポイント2 関係派遣先割合報告書の書き方

では、具体的にどう「関係派遣先割合報告書」を作成するのか説明します。
ここからは関係派遣先割合報告書の見本(PDF)を見ながら解説しますよ。

「関係派遣先」とは?

ここでまず押さえておきたいのが、「関係派遣先」という言葉の意味です。
これは皆さんの会社から見てグループ関係で派遣先になっている会社を指します。
例えば、連結決算している親子関係にある会社等になりますが、連結決算していなくとも、グループ会社に該当する場合もあります。

詳しくは関係派遣先割合報告書見本に書かれているので、皆さん自身が直接の担当者ではない場合、経理や財務部署、あるいは顧問税理士や会計士といったしかるべき担当者と連絡を取って、自分の会社に関係派遣先があるのかをまず確認しましょう。

自社情報入力欄

● 報告対象期間
自社の決算期をそのまま記入します。

● ①〜⑤の基本情報
自社の派遣許可証に記載されている内容を一字一句そのまま記入します。

  • 番地は漢数字か算用数字か
  • ビル名の階数表記(5階/5F など)
  • 室番号の記載方法

など、少しでも異なると労働局から修正を求められるため、許可証から完全に転記しましょう。

1 労働者派遣実績報告

① 労働者派遣の実績(総労働時間)

関係派遣先割合報告書は派遣元事業所ごとではなく、派遣元事業主単位で作成します。
「報告対象期間」中の 自社のすべての派遣労働者が派遣先で働いた総時間 を合計してください。
皆さんの派遣会社が複数の事業所(本社、支店など)で派遣許可更新を受けている場合は、そのすべての事業所分を合計します。これは続く②③も同様です。

対象となる時間の考え方

  • 残業・休日出勤もすべて含む
  • 報告期間中に入社・退社した派遣労働者も該当
  • 正社員→途中から派遣労働者になった場合も対象
  • 正社員の“ピンチヒッター”で数日だけ派遣労働者として働いた場合も含む

最終的に算出した合計が「〇時間●分」と1時間に満たない端数が出た場合は切り捨てて、時間単位で記入します。

②・③ 関係派遣先への派遣時間

② ①のうち、関係派遣先への労働者派遣の実績(総労働時間)

関係派遣先がない場合 ➜ 0時間
ある場合は、関係派遣先で働いた時間をすべて合計して記入します。

③ ②のうち、定年退職者の労働者派遣の実績(総労働時間)

“定年退職後”に自社の派遣労働者として働いている人が対象です。
対象者がいない場合は0時間で記載してください。

合計する派遣労働者に該当する例は以下です。

該当する例

  • 親会社Bを定年退職 → 派遣会社Aの派遣労働者となり、Bに派遣
  • Bを定年退職 → 継続雇用 → 退職後にAで派遣労働者となりBへ派遣
  • A・Bとは関係のない会社Cを定年退職 → Aの派遣労働者としてBに派遣

該当しない例

  • 定年でなく「雇止め」などで辞めた場合
  • Bを定年退職 → Aの派遣労働者 → 関係派遣先でないCへ派遣(②に該当しない)

判断が難しいときは、労働局の需給調整事業担当へ確認しましょう。

定年は60歳以上でなければなりませんが、上限に定めはないので、例えばBを定年60歳で退職した後、Cに就職して定年65歳で退職した後に、Aの派遣労働者としてBに派遣されている場合も該当します。

つまり、Aの派遣労働者になる前に60歳以上でいったんどこかの会社で定年になっていればいいわけですね。

あくまで「定年」ですから60歳に達していても、BやCで1年ごとの有期雇用を繰り返す契約社員であって、雇止めで辞めてからAの派遣労働者になった場合は定年退職ではないので対象外ですよ。

数値の関係に注意(①≧②≧③)

数値は必ず、
①(全派遣時間) ≥ ②(関係派遣先) ≥ ③(定年退職者)
となります。
1つでも逆転する場合は、定義の誤解・集計ミスの可能性が高いです。

④関係派遣先への派遣割合(%)

④を報告書の指示通りに計算して「%」を出します。
これが「関係派遣先割合」です。

関係派遣先がない会社さんは当然0%になります。
割合が0になるからといって関係派遣先割合報告書を提出しない、ということはできませんので注意しましょう。

①の労働時間合計は必ず集計して報告、提出しなければいけません。

④の割合が80.0%を超えた場合

関係派遣先がある会社さんは「④ 関係派遣先への派遣割合(%)」の割合に注意しましょう。
80.0%までの数字だったら合格です!

  • 80.0%以下 → 合格
  • 80.1%以上 → 派遣法違反となる

もし80.1%以上の数字になってしまった場合、派遣法違反になってしまいます!
数字を書き換えて80%以下に見せると 虚偽報告 となり、さらに大きな問題になります。
まずは正直に報告したうえで、翌年以降は80.0%以下で報告できるように改善しましょう。関係派遣先への派遣自体を減らすか、関係派遣先に派遣する定年退職者を増やすかなどが考えられます。

何年も改善が見られない場合は、派遣許可取り消しの対象となってしまう可能性があります。

皆さんが関係派遣先への派遣について、直接の権限を持つ担当者ではない場合、下手をすると派遣会社の存亡に関わることですから、派遣先の選定に関わる営業担当や経営陣など、しかるべき部署に必ず報告して、状況の改善に努めてもらいましょう。

備考

最後の備考欄に労働局問い合わせ用として担当者名と電話番号を書きましょう。

また見本にもある通り、連結決算を導入していないグループ企業がある場合は、備考欄にその会社名(複数あればすべて)を記入してください。

これで関係派遣先割合報告書は完成です!

ポイント3 提出に必要な書類

関係派遣先割合報告書の提出時のポイント

関係派遣先割合報告書の提出時には前回説明した「収支決算書」の一連の書類と、今回説明した「関係派遣先割合報告書」をそれぞれ、正・副・控として、計3部用意しましょう。

3月末決算の会社さんは第1回目のコラムで説明した通り、派遣事業報告書の一連の書類もすべて一緒に提出することになります。

関係派遣先割合報告書自体には添付書類は通常はありませんが、見本にもある通り連結決算を導入していないグループ企業があり、備考欄に書ききれない場合は別紙で一覧を作成しましょう。これは自由な書式で作成してかまいません。

添付書類について

また、PDF見本「添付用紙」のように労働局ごとに独自の添付書類を用意していることもあるので、自社の担当の労働局に確認して必要な書類をもれなく提出しましょう。
この辺りは第1回目のコラム「派遣報告書を提出する際のポイント」で説明したことと同じです。

そのほかには郵送の場合は返信用封筒なども必要になるわけですが、これは第1回目のコラム「派遣報告書の提出について」で説明したことと同じですので、そちらを参照してくださいね。

労働局対応や保管場所について

提出後の労働局対応や、控えの保管場所や保管期限は第2回目のコラム「派遣報告書提出後の、気を付けたいポイント」で説明したことと同じですので、そちらを参照してくださいね。

さいごに

次回からはまた「派遣事業報告書」に戻り、報告書の各項目の作成方法について解説していきますよ~!

派遣事業報告書はたくさん記入する箇所がありますので、来年6月の提出に向けて、1月から少しずつ丁寧に解説していきますので、お楽しみに!

当事務所では関係派遣先割合報告書に関する相談もいつでも受け付けています。

何かありましたら、まずは下記、当事務所HPのお問い合わせフォームから質問してくださいね。初回相談は無料です。


解説者

みなとみらい人事コンサルティング 代表
泉 文美(いずみ あやみ)

横浜生まれ。2005年東京大学卒業。
ハローワーク、労働基準監督署、労働局、厚生労働省勤務経験有。
2012年社会保険労務士事務所開業。
開業当初より厚生労働省指定「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」講師を務める。派遣・紹介関係の顧問先多数。講演・著述の依頼もこなす。
法務と実務両面に強い、派遣・紹介特化型社労士として、役所での勤務経験も活かし、「役所対応に強い社労士」として定評がある。

https://mmjinji.com/