
こんにちは、社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
厚生労働省の派遣労働者実態調査によると派遣労働者に占める60歳以上の者の割合は、2012年の7.5%から2022年11.2%に増加していいます。
今回は、高齢者の派遣について解説します。



※この記事は 2025年3月3日時点の情報を元に解説しています。
目次
高齢者雇用のメリット

人材不足を補うため以外にも高齢者の積極採用にはメリットがあります。
高齢者は長年の職務経験を持っており、特に専門性が求められる職種で即戦力として活躍することが期待できます。
高齢者の働き方の希望は多様です。
フルタイム勤務に限らず、パートタイムや労働日数の少ない働き方など、多岐にわたります。
こうした希望に合った職場を提供することは、企業と労働者の双方にとってメリットがあります。
労働者派遣法と高齢者
労働者派遣法は、60歳以上の高齢者に関する規制において、いくつかの特例を認めています。
それにより、派遣会社・派遣先双方にメリットがあります。
また、高齢者が直接雇用で働く場合、賃金が低く設定されがちです。しかし、労使協定方式を採用している派遣会社では、業務内容に応じて賃金が決まります。そのため、年齢に関係なく賃金が決定されるというメリットがあります。
60歳以上の高齢者に関する規制においての特例
1.抵触日の適用除外
事業所単位の抵触日、個人単位の抵触日のどちらも適用されません。
個別契約締結時に「派遣労働者を60歳以上もしくは無期雇用労働者に限定する」とした場合、派遣先は、事業所単位の抵触日の通知を省略することができます。
2.日雇派遣原則禁止の例外
60歳以上の者は、日雇派遣で就業することが可能なため、短期・単発業務でも就業可能です。また、年齢を確認するだけなので、年収要件による例外より確認を簡単に行うことができます。
3.離職後1年以内の労働者派遣禁止の適用除外
退職後1年間は、派遣先を退職した者を同じ会社に派遣社員として派遣することは、禁止されています。
60歳以上の定年退職者はこの制限を受けることがありません。
60歳以上定年退職者を派遣会社が雇用し、元の勤務先に派遣することは、高齢者雇用安定法で定年後の継続雇用の方法として認められています。
4.関係派遣先割合(8割規制)の除外
関係派遣先割合を計算する際に60歳以上の定年退職者の派遣就業時間を除外することとされています。
グループ企業内派遣の8割規制について
派遣元事業主は、当該派遣元事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者等(関係派遣先(グループ企業))に労働者を派遣するときは、関係派遣先への派遣割合が8割以下となるようにしなければならない。(法第23条の2)
※ 60歳以上の定年退職者は制限の対象外とされる。<省令>https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000644421.pdf
グループ企業内派遣の8割規制について|厚生労働省(参照 2025-3-3)
この場合の定年退職とは、関係派遣先を定年退職した場合だけではなく、全く関係のない企業を60歳以上で定年退職した場合も含まれています。8割規制を順守するための手段として高齢者の積極採用を行うことも考えられます。
高齢者派遣の課題
高齢者は若年層に比べて身体能力の低下があるため、安全衛生面で派遣先の環境整備が欠かせません。特に職場での高齢者の転倒事故は増加傾向にあるため対策が必要です。
ただし、高齢者の働きやすい職場環境は、すべての世代にとって働きやすい環境でもあるので、高齢者以外の定着にも有益と考えられます。

解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。