こんにちは。社会保険労務士の中宮 伸二郎です。
近年、健康経営が推奨され、過重労働に伴う健康障害防止やメンタルヘルスケア等、従業員の健康への配慮は欠かせません。社内でこれらの施策を検討するために設置が義務付けられているのが、衛生委員会です。
今回は、衛生委員会について解説します。
※この記事は 2023年8月8日時点の情報を元に解説しています。
目次
衛生委員会とは何をする組織?
衛生委員会とは、職場環境の改善や従業員の健康管理など、職場の衛生・健康に関する企業の施策を検討する組織です。
委員構成の半数を過半数労働組合等の推薦によるとし、労働者の意見を反映しやすい組織になっています。
衛生委員会の設置が必要な企業
衛生委員会は常時50人以上の労働者がいる場合、設置義務があります。
下図の例では、労働者のカウントが、派遣元と派遣社員を合わせて50人という扱いになります。
派遣先も同様にカウントし、50人を超える場合設置義務があります。
引用:(7) 衛生委員会 (安衛法第 18 条、安衛則第 22 条~第 23 条)
ア 設置基準
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei29/pdf/101130-1a_06.pdf
派遣先は、派遣労働者を含め常時 50 人以上の労働者を使用する場合は、衛生委
員会を設置し、労働者の衛生に関する事項を調査審議させなければなりません。
厚生労働省 第4章 派遣先が実施すべき事項(参照 2023-08-09,p.7)
常時50人以上とは、雇用している人数が50人以上という意味です。
常用雇用(無期雇用)だけをカウントするのではなく、雇用区分にかかわらず、日雇・パート、派遣社員を含めた人数となります。また、派遣社員は、派遣元・派遣先双方で従業員数にカウントします。
衛生委員会と類似した組織に「安全委員会」があります。こちらは建設業、製造業で設置が義務付けられていますが、人材サービス(派遣・職業紹介)のみを取り扱う企業には設置義務はありません。
衛生委員会だけ設置してください。
衛生委員会の構成
人材サービス業では、第2種衛生管理者の資格がある者のことです。
試験に受けるだけではなく、労働基準監督署に選任の届出をしておかなければなりません。衛生管理者の受験資格は、企業で健康診断実施事務などの労働衛生に関する業務経験が一定年数以上あることです。
衛生委員会は、最低4名の委員が必要となります。
①事業所においてその事業の実施を統括管理する者もしくはこれに準ずる者
②衛生管理者
③産業医
④衛生に関し経験を有する労働者
①事業所においてその事業の実施を統括管理する者もしくはこれに準ずる者
①の統括管理者は1名と定められていて、衛生委員会の議長を担います。
②衛生管理者 ③産業医 ④衛生に関し経験を有する労働者 について
②~④は、法令で人数の定めはありません。企業の規模に応じて必要な人数を指名してください。
ただし、議長以外の委員の半数は、過半数労働組合(または労働者の過半数代表者)の推薦に基づき企業が指名しなければなりません。
労働者代表の推薦について、よく誤解されていることがあります。
企業が3名指名した場合、労働者代表の推薦も3名必要となり、議長を含め最低7名必要になると解説されることがあります。しかし、企業指名と労働者代表推薦が別の人物であることは求められていません。
労働者代表推薦者を企業が指名すれば、最低4名で委員会を構成することが可能です。
衛生委員会の開催頻度
衛生委員会は、毎月1回以上開催しなければなりません。オンラインで開催することも許可されているため、産業医が多忙で毎月の出席が困難であれば、オンラインで出席を依頼してもよいのではないでしょうか。
衛生委員会開催でよく聞く悩みは、毎月の議題の選定です。
産業医が毎回テーマを用意してくれることもあるようですが、多くの場合、企業が議題を用意しなければなりません。
定番の議題として、
「定期健康診断・ストレスチェックの実施」と「事後措置、時間外労働が多い場合の措置」などがあります。
また、季節的な議題として「インフルエンザ対策、熱中症予防」などが考えられます。「議題がないから衛生委員会を開催しない」ということがないよう、ある程度の年間予定をあらかじめ立てておきましょう。
解説者
社会保険労務士法人 ユアサイド
代表社員
社会保険労務士 中宮 伸二郎
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。8名の社会保険労務士を擁する事務所の代表として様々な業種の労務問題にかかわる。有期雇用、派遣社員に関する実務に詳しく、2007年より派遣元責任者講習の講師を務める。