<コンサルタント山内氏が解説>労使協定方式の現在
渡辺部長
こんにちは。私は、派遣会社の営業部長をやっている渡辺と申します。派遣業界向け経営支援のエキスパートである、コンサルタントの山内さんに色々教えてもらえるってことで、やって来ました!
山内氏
こんにちは。株式会社人材ビジネス経営研究所 代表の山内 栄人です!
私は、請負現場を複数立ち上げ⇒派遣の担当者マネージャー支店長を経験したのち、船井総合研究所に入り、派遣・請負のコンサルタントを8年勤めその後独立。人材ビジネス業界に携わり20年。現在、約140社が参加する高付加価値型アウトソーシング研究会を主催しています。
渡辺部長
派遣の賃金について詳しく教えてもらえますか?
山内氏
では、解説していきますね~!

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【解説】賃金の方式の概要

渡辺部長
労使協定方式と派遣先均等均衡方式、それぞれのメリット・デメリットを教えてください

山内氏:
労使協定方式と派遣先均等均衡方式のメリット・デメリットについてお話します。

労使協定方式は、「派遣先の賃金」と「同一労働同一賃金」を比較しなくて良い。派遣元だけで賃金を決めることができる。これが一番のメリットになります。一方でデメリットは、賃金は統計から算出されるので、派遣先の派遣料金と関連性がない点です。

派遣先均等均衡方式は、まさに派遣先と均等均衡させる方式なので、派遣先の賃金・福利厚生・手当・交通費などを比較して、同等以上にしなければなりません。まず、派遣先から情報を共有してもらわなければ成立しない。均等均衡させるための情報を出したがらない派遣先が多いので、やりたくてもやれないことがありえます。

<労使協定方式vs派遣先均等均衡方式>どちらの採用が多い?

渡辺部長
労使協定方式と派遣先均等均衡方式。どちらの方式がどの程度採用されているのか教えてください

厚生労働省の集計で出ている話なのですが、労使協定方式が90%弱。派遣先均等均衡方式が10%少し。9:1で圧倒的に労使協定方式が採用されている。これが実態です。

私の肌感覚でもほとんどの会社が労使協定方式でやっている状況だと感じています。

労使協定方式の抑えるべきポイント

渡辺部長
労使協定方式を運用する際、気をつけるべきポイントを教えてください

労使協定方式は、その名の通り「労使の協定を結ぶ方式」ということになります。気を付ける点はしっかりと労働者代表を選出することに尽きます。労働者代表を適当に決めていると、そもそも労使協定が無効になることがありえます。

労働者全体の過半数以上が承認した方が労働者代表になります。この方がちゃんとした協議の元で選出されたかどうかがポイントです。ここを端折ってしまうと、労使協定が不成立になります。

一般労働者の賃金の平均である「賃金構造基本統計」と比較して「地域指数(就業場所の物価等)」をかけたもの。これが一般労働者賃金になります。これを下回ってはいけません。交通費・退職金なども対象なので気を付けましょう。

<労使協定方式>実際にあったトラブル

渡辺部長
労使協定方式を運用した中で、実際に起こったトラブルの事例。それをどうやって解決したか教えてください

よくあったのは、労使協定方式の運用直後。派遣先から貰っている金額と比較して、統計から出した時給が、どうしても割高になるケース。こうなると、派遣先と協議して、派遣料金を上げるか、比較する統計を一生懸命選び直すような努力が必要です。これは、各社苦労していたようですね。

がわからなくなる場合もありえます。このトラブルは毎年発生する気がしていて、避けて通れない問題と感じています。

「交通費が貰えない」「退職金ってどうなっていますか?」
労使協定方式の理解が浅い営業担当が、このような問い合わせにいい加減な返答をすると、労働局やユニオンに駆け込まれるような事態になりかねません。
内勤社員の方に教育は抜かりなくやっていただく方がいいかと思われます。

【メリット】労使協定方式は賃金の話がしやすくなる

渡辺部長
労使協定方式のこういう利点がある、というお話しをいただけますか?

派遣の実態にも関わってくる話なのですが、
「労使協定方式の賃金は派遣先の派遣料金によって決めるのではなく、職務内容に応じた社内(派遣元)の人事制度に基づいてお支払いをする」というのが一応建前になっています。

ほとんどの会社が、派遣先から頂いた金額にマージンをひいて、賃金を決めるというやり方をおこなっています。マージンが足りなくなれば、派遣先に派遣料金の値上げをお願いをする。

このやり方を建前に近づけていくとなると、派遣社員の時給は評価で上げることになるわけです。しかし、派遣先へご理解していただくことができていないケースが多い。

労使協定方式なら「年次が上がったので、派遣料金が上がります」ということが伝えやすい。ここから派遣料金の話ができるようになってくると、派遣社員にも「ここまで頑張ったら時給がいくら上がるよ」と言いやすい環境になります。このような話ができると、働く側の意欲へつながりやすくなります。派遣元・派遣先・派遣社員、誰にとってもいい話ですよね。

派遣社員が退職金制度を利用するケースが増えてきたので、今後、退職金をもらう派遣社員が増えていきます。そうなっていくと、「派遣で働くのも悪くないよね」っていう社会認知が広まっていくと思われます。

頑張った人が報われるような運用を目指していきたいですね。

まとめ

派遣会社の9割が労使協定方式を採用しているということで、多くの派遣社員が労使協定方式で働いていると思います。まだまだ派遣社員も派遣先も、労使協定方式への理解が進んでいません。下手な零細企業で正社員として働くより、労使協定方式の派遣社員の方が守られています。ここをもっとアピールしていけたら、派遣で働こうという気になる方も増えるでしょう。派遣業界全体の社会からの見られ方も変わっていきます。

今までになかった派遣の活用のされ方が出てきます。簡単ではありませんが、一緒に頑張っていけたらと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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人材ビジネス経営コンサルタント 山内 栄人 氏

株式会社人材ビジネス経営研究所 代表取締役
株式会社過去オール善 代表取締役
高付加価値型アウトソーシング研究会 主催
▽全国の派遣会社約140社が正会員として加盟
https://www.jinzai-biz.co.jp/studygroup/studygroup.html

請負現場を複数立ち上げ、派遣の担当者、マネージャー、支店長を経験したうえ船井総合研究所に入り、派遣・請負のコンサルタントを8年勤め、その後独立。派遣業界の地位向上、不本意型の派遣社員を一人でも減らすべく活動中。

現在はYouTubeチャンネルをエイジン名義で毎日更新。派遣の情報も豊富に発信中!
▽『リアルゲームチャンネル(リアルをゲームのように攻略するチャンネル)』
https://www.youtube.com/channel/UCOR3wQK7wI3qfTCPrf1SqCQ

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